ターミナル期患者に対する訪問看護の視点とは − 家で最期を迎えること −

2016.7.24 訪問看護のこと, 在宅医療
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さやや

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年をとり死んでいくことは、どんな人にとっても共通の課題です。

 

自分はどんな風に年をとりたいか。

自分はどんな風に死を迎えたいか。

 

と考えることは誰にでもあるのではないでしょうか。

 

もし、自分の余命が長くないことを知ったとき。

(痛みを伴う長い闘病生活の上で、)自分の体調が今後回復する見込みがないことを知ったとき。

 

どういう生き方をすればいいのでしょうか。

 

そして医療従事者や介護従事者の方は、どのようにそういった患者さんの課題と向き合っているのでしょうか。

 

第1回の今回は、ターミナル期の患者さんが、死を迎える場所として「自宅」を選んでいることについて書きたいと思います。

 

 

なぜ、在宅医療?

 

なぜ最期を迎える場所に「自宅」を選ぶのか。

その背景にはつらい闘病生活と、家族とのつながり、最期まで自分らしく生きたいという願いがあるようです。

 

ターミナル期を考える際に「末期」という言葉が用いられたりします。

「末期」の定義は「現代医療において可能な集学的治療の効果が期待できず、積極的な治療がむしろ不適切と考えられる状態で、生命予後が6か月以内と考えられる段階」だそうです。

ターミナル期の患者はがん末期の患者のみをさしているのではなく、高齢により全身の衰弱が著しいなど、積極的な医療による治療の見込みがなくなり、死期が近いと予測されている患者全体をさします。

 

人生の最期を迎えるターミナル期の患者が医療従事者・介護従事者に求めていることは、患者とその家族の自己決定を尊重しつつ「全人的苦痛」の緩和を図るためのケアであると言われています。

 

全人的苦痛とは、身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛などです。

身体の痛みだけでなく、ターミナル期の患者は様々な苦痛と戦っていて、それは健康な私たちからしたら想像を絶するものです。しかも、ターミナル期の患者とは積極的な医療による治療の見込みがなくなった状態の患者のことを指すのです。

 

回復の見込みがないならば、長年慣れ親しんだ自宅で、大好きな家族との日常に帰りたい、家族に看取られたいと願う方が多いのも頷けます。

 

現在、日本人の大半は病院で亡くなっています。

2010年の「人口動態統計」によると、死亡場所の構成割合は、病院77.9%、自宅12.6%です。その一方で、2012年の「人口動態調査」「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では、人生の最終段階を過ごしたい場所として自宅を選んだ方が71.7%いたのです。

 

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出典:「2010年人口動態統計」より

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii10/dl/s03.pdf

最終段階を過ごしたい場所

出典:「平成24年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」 より

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000041847_3.pdf

 

病院で亡くなる人が多いとはいえ、余命が限られた場合は自宅で過ごしたいと考える人は少なくありません。実際の死亡場所と希望にはギャップがあるのです。そこには、医療や介護のノウハウや経験の少ない家族に対する遠慮があって、最期の場所を「病院」とする患者が多いことが背景としてあるそうです。

 

しかし、医療機器などに頼った無理な延命が、患者本人や家族にとって幸せなことなのかという疑問が語られるようになり、自然で穏やかな死を迎えたい、迎えさせたいという人は増えつつあります。

 

医療従事者・介護従事者がそういった願いを尊重することが、最終的には、患者やご家族のQOL(Quolity of Life)へとつながっていくのです。

 

 

その人らしい選択を尊重するという治療

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その人らしい選択を尊重することがその人の幸せにつながっていくという考え方は、障害者の私も共感するところです。

可能性が閉ざされても、閉ざされた中で、皆に協力してもらいながら「自分はこれをしたい」という希望を叶えていくことで、自分の生や、周りの人の生に感謝できるようになります。

そしてそれが何よりの治療だったりします。

 

それを私は障害者施設で学びました。

障害者になったとき、私は結構ひねくれていて、絶望感とやり場のない怒りでいっぱいでした。

でも、可能性が閉ざされたら閉ざされたで、皆に協力してもらって、いろんな経験をさせてもらいました。

「仕事がしたい」という欲求をかなえてもらいました。

 

すると、前を向く力がわき、弱音と愚痴を吐く機会も減ったし、全てがありがたく思えるようになりました。

たとえターミナル期の患者にとって、家族にとっても、その人らしい選択を尊重してもらえることが治療であり、

「ありがとう」と思えることが何よりの治療であり、癒しであり、QOL向上につながるののだと思ったりします。

 

 

次回は「ターミナル期患者に対する訪問看護の視点とはー 訪問看護に求められる8つのこと その1 ー」について書こうと思います。

 

 

 

参考文献

 

「現場で使える訪問看護便利帳」介護と医療研究会 株式会社翔泳社

「よくわかる在宅看護」 角田直枝 学研

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