ターミナル期患者に対する訪問看護の視点とはー 訪問看護に求められる8つのこと その1 ー

2016.9.1 訪問看護のこと, 在宅医療
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さやや

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前回の記事(ターミナル期患者に対する訪問看護の視点とは − 家で最期を迎えること −)では、自宅で死を迎えることを望む方が増えてきているというお話をしました。

 

「その人らしい選択を尊重する」ということ・・・
療養者中心の医療(patient-centered medicine)は今日の目指すべき医療の姿です。

 

以前は、多くの医療の現場で医師が治療の方針を決定すると、患者はそれに従うべきだとされていました。
しかし今日、治療の中心はその患者であり、患者第一主義は医療従事者に共有された理念です。

 

ターミナル期患者(がん末期の患者だけでなく、高齢により全身の衰弱が著しいなど、積極的な医療による治療の見込みがなくなり、死期が近いと予測されている患者全体、を指しています)の方が死を迎える場所を自宅と決めてからも、医療従事者はその方に適した形で医療を提供します。

 

ターミナル期患者が自宅で医療を受ける際、医療従事者(看護者)に求めていることは何でしょうか。そしてさらに視野を広げて、今社会が訪問看護に求めていることとは何でしょうか。

 

訪問看護に求められる8つのこと

訪問看護に求められていることを8つご紹介します。

 

  1. 倫理観
  2. 終末期ケア
  3. QOLの向上
  4. 家族への支援
  5. 病状・病態の予測と予防
  6. 状態・状況に合わせた看護
  7. 地域医療
  8. 社会問題に対する取り組み

 

今回は1から4まで順にご紹介します。

 

1、倫理観

先述した通りで、療養者中心の医療が今日の目指すべき医療の姿であり、患者の方は自分に必要な医療に関する説明を受けて主体的に判断する権利があるとされています。

自分のことを自分で決める権利を自己決定権といい、医療従事者(看護者)には「(患者の)自己決定の支援」が求められています。
具体的には、訪問看護に携わる看護者は、看護者自身の価値観を当事者に押し付けることなく、必要とされる情報と必要とされていない情報を考え、患者の意思に沿うことが求められています。
患者の方にとって適切な選択肢がない場合は、代替案の提示も必要です。
患者の方が自己の権利を表明することが困難な場合の権利擁護や虐待の防止、情報管理も期待されています。

 

2、終末期ケア

 

悩みや不快感を取り除く治療から、

患者の方に人生の最期を気持ちよく、穏やかな気持ちで過ごしてもらうための心のケア

そして「看取り」が求められています。

患者さんや家族の不安や悩みに寄りそう力も必要とされるため、柔軟な対応力が必要です。

 

3、QOLの向上

QOL(Quality of Life)は、人それぞれの素因・環境・習慣の違い・現在の価値観・考え方・感じ方によって多様化している概念です。
医療の分野の中でもとりわけ在宅看護の分野では、一時的に入院する病院とは異なり、生活の場である居宅で看護が行われるため、

看護が日常生活の一部であり、看護者の働きかけは患者のQOLに大きく関わってきます。
看護者は

医療が大きく関与する身体的側面だけでなく、精神的側面・社会的側面と多様な面から対象者の環境を考えることが重要です。

また患者自らが、自身のQOL向上に最もふさわしい治療法・生き方を選択できるような支援を行うことが看護者には求められています。

 

 

4、家族への支援

在宅看護では居宅で看護が提供されるため、患者を家族のなかの存在としてみる視点が求められます。
身近な家族は介護の担い手でもあり、患者の病状や生活の変化の観察者であるため、看護師にとって非常に重要な存在となります。
したがって、在宅看護では家族への配慮が重要になります。
しかし家族と患者自身はケアの送り手と受け手という相反する立場と言えます。
看護者は常に患者と家族の双方のQOLを尊重する姿勢が必要です。

 

 

いかがでしたでしょうか。
次回は「ターミナル期患者に対する訪問看護の視点とはー 訪問看護に求められる8つのこと その2 ー」をお伝えします。

 

 

参考文献

「要点がわかる在宅看護論」河野由美 株式会社ピラールプレス

「現場で使える訪問看護便利帖」介護と医療研究会 株式会社翔泳社

「よくわかる在宅看護」角田直枝 学研

「看護師になる2016」朝日新聞出版

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