高齢化が進む日本では、在宅医療の需要が大変な高まりを見せています。
その中で、在宅医療の対象者は「高齢者」である場合が多くあります。
高齢者に対する医療は一般の若年層に向けての医療と少し異なるといわれます。
高齢者には、高齢者の特質があり、その特質に合わせた医療を施す必要があるというのです。
多病で、その病態も個人差の大きい高齢者に対する医療提供は医療従事者にとって難しいものになっています。
今回は在宅医療における高齢者へのアプローチの視点をお伝えします。
目次
まず、「高齢者」の特質とは
特質 その1 主訴がいくつもある
後期高齢者になると平均8つ以上の訴えがあるといいます。また、既往歴も複雑な場合が多いです。
特質 その2 複数の慢性疾患を保有
ひとりで多くの慢性の疾患を持っている方が多いです。また、その可能性があります。
特質 その3 薬剤数が増え、相互作用や薬物有害事象が起こりやすい
副作用が若年層よりも多く見られるほか、薬剤に対する反応が若年層と異なるといいます。
特質 その4 症状が非定型的・非典型的である
疾病の表れ方や反応が若年層と異なります。
特質 その5 主訴の表現がずばりといかず、上手く解釈する必要がある
症状や兆候が不明瞭で、本人に自覚症状が表れにくいこともあり、訴えをうまく解釈し、問診の仕方を工夫する必要があります。
その他高齢者の特質
個人差が大きい
患者の予後が医療のみならず社会的環境に大きく影響される
生体防御力が低下しており、疾患が治りにくい
合併症を起こしやすい
基礎疾患のコントロールが崩れやすい
意識障害、一過性のせん妄が出現しやすい
水・電解質の代謝異常を起こしやすい
高齢者への在宅医療で求められていることとは
個人差が大きく、また多くの疾病を抱えがちな高齢者を在宅で支援する時に大切なこととは何でしょうか?
和田秀樹氏は、著書「医者をめざす君たちへ:知っておかなければ損する『現実と未来』」
で、このように記しています。
「高齢社会に必要なのは、一人の患者を総合的に診られる医者」
「専門分化した医学モデルは高齢者に通用しない」
高齢者の在宅医療の視点として、全ての病態を把握した包括的な管理が求められているのです。
また、在宅医療 ではその人の「生活」、大きくいえば「人生」をもアプローチの視点として持つ必要があるでしょう。
疾患の経過が医学的要因のみならず環境要因の影響を強く受けることも視野に入れて、
居住環境や生活習慣、経済状態、家族関係、社会関係を把握し、それらを医療に反映することが重要です。
参考サイト:
「高齢者に対する適切な医療提供の指針」(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/pdf/geriatric_care_GL.pdf)
厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000125582.pdf)
日本医師会(http://www.tokyo.med.or.jp/kaiin/kaigo/chiiki_care_guidebook/035_072_chapter02.pdf)
参考文献:
「高齢者看護のアセスメント」 廣瀬知人 医学監修 / 田中久美 編著 メディカ出版
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