介護事業所の「倒産」に歯止めをきかせる画期的な方法はあるのか?

2017.1.27 在宅介護
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hosokawa

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「介護産業こそ日本が誇る産業だ」

筆者は常々そう思い、長年この業界に携わっています。

今月11日に東京商工リサーチから発表されたデータによると、全体で見たときに企業の倒産件数が低水準だったのにも関わらず、

こと「介護・老人福祉事業」に関していえば倒産件数が前年比42.1%となり、かなり歓迎できない数字になっています。

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(東京商工リサーチ)

周知の通り今後は高齢者が増加し、支える人口は減ります。また、老老介護や介護離職についても社会問題として広く扱われています。

それゆえ、サポートする受け皿となる介護事業所は「安定的な体制」を整え、「継続的にサービスを供給」していく必要があります。

しかし、この倒産件数です。

一体何が問題なのでしょうか?

少し掘り下げて独断と偏見でその解決策を考えてみたいと思います。

介護事業所は足りてるのか?

少し古い2014年のデータにはなりますが、総務省のデータに基づいた「老人福祉・介護事業所数ランキング」で、全国の65歳以上人口1万人あたりの介護事業所数を「偏差値」という形で、算出しています。

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(総務省:老人福祉・介護事業所数より)

このデータでは、介護事業所数は「65歳以上の人口とは相関がなく」、高齢者の多さと老人福祉・介護事業所数の間には関連がないことを示しています。

ちなみに、一番充足している県は宮崎県で、一番不足している県は茨城県だと言います。

他方、「小規模デイサービスの新設に自治体が拒否権」という記事が1月7日の日本経済新聞に掲載されました。

これは、市町村に競合する他のサービスがあり、デイサービスの供給が計画を超えている場合に、自治体が設置を拒否できるというもの。

上記した介護事業所中では小規模のデイサービスは供給量が多いと言われており、それまで量でカバーできなかった部分も小規模多機能などの新しい地域密着型サービスでカバーできるようになってきています。

今後、小規模デイサービスは「一定時間安心して預けられる」という利便性のみではなく、自立支援などの成果を発揮できなければ、淘汰されていくことになるのかもしれません。

訪問看護事業所、訪問介護事業所については小規模事業者ほど仕事がなく収支が悪く、大規模事業者ほど慢性的な人手不足であり、なかなか在宅医療・介護を担うべく事業所が増えていかないという現状があります。

根本的に考え方を変える必要性があるのかもしれない

現在、周知の通り「在院日数の短縮」「ベッド数の削減」などを中心として医療再編真っ只中にあり、政府主導で在宅へのシフトが行われています。

一方で、在宅医療・介護を担う人材は慢性的に不足しています。

そしてそれが介護事業所の倒産理由にもなっています。

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そのため、「潜在看護師やヘルパーが復帰しやすい体制」の強化をしたり、「介護職員に対しての賃金アップ(処遇改善加算)」の施策を実施していますが、特効薬にはなっていないのが現状です。

このままだと、2025年時に必要な人員確保ができずに、当初描いていた改革シナリオが絵に描いた餅になる可能性もあります。

いかに在宅医療・介護を担える人材を確保するかは、もちろん個々の事業所、自治体レベルの努力は必要になりますが、やはり国としての施策が必須であることは言うまでもありません。

所有・経営・現場を分けて「生産性」を上げる

日本の医療・介護サービスは前例主義に従った内向き産業と言えます。古い体質が残っており、経営的視点があってないに等しい珍しい産業です。

一方で、総務省統計局の労働力調査(2016年12月)によると、全就業者数は6,452万人で産業別就業者を比べると、第1位が卸売・小売業(1067万人)、2位が製造業(1032万人)、次いで医療・福祉(792万人)となります。

近い将来に医療・福祉関連の就労者は全産業のトップに躍り出ると予測されています。

しかし、低収入にあえぐ介護職種も多く、その改革が必要だと言えます。

その改革の一つが、「生産性を徹底的に高める」ことだと言い切れます。

その生産性を高めていくためには、『所有』と『経営』と『現場』を分離した新しいモデルを作ることが必要だと考えます。(参考:日本版IHNモデルの創出 高齢者増加は成長へのチャンス

医療・介護は「現場」が本当に強い業態です。

そのため、所有と経営が軽視されがちですが、良いサービスを築き、広げていき、海外に輸出するなど日本の基幹産業として育てていくには「所有」と「経営」が肝になります。

現在、小規模事業所を大規模事業者に集約させていく流れも一部ではありますが、そうした流れとも類似はしていますが少し異なります。

例えば、地域で不動産の所有者が土地や家屋を活用し介護施設にリノベーションする。それを介護事業所経営者が借り上げ、請求業務などの経理・財務も含めた経営を担う。最後に、看護やリハビリ、介護が現場にて徹底的に生産性を磨く。

一見するとできているようですが、介護の現場ではまだまだ分離ができずに、特に小規模事業所ではトップの状況如何で事業所をたたまないといけなくなる現状があります。

それが、業界全体で事業所数が伸び悩んでいることにもつながっていると言えます。

専門職が「現場」に集中でき生産性を高められるように、「経営」と「所有」を一体的に賄える仕組みが求められていると考えます。

介護事業・介護周辺産業は必ず日本を成長させる柱になる

日本は先進国に先駆けて、後期高齢者が圧倒的に増加する超高齢社会に突入していきます。

そうした社会課題の解決に対して「介護保険制度」が国家主導で2000年より導入されましたが、民間のサービスによるイノベーションが今後必ず起こってくると予想します。

その中でも3つのサービスをご紹介します。

クラウドケア

混合介護(自費介護)

ベンリー

クラウドケアは、介護版UBERとでもいいましょうか。米国では似たようなサービスとして元Googleエンジニアが作成したHonerというサービスがありますが、平たく言えば地域の互助を意識しながらケア人材をシェアリングするサービスです。

混合介護は、現行の介護保険サービスに対して一体的に自費サービスを対象者以外にも提供できるという点で生産性も高く、画期的なサービスになる可能性があります。詳しくは先日の記事「混合介護解禁で介護職員の環境はどう変わる?」を参照下さい。

ベンリーは生活周辺のサービスを”なんでも”依頼出来るサービスになります。最近では、社会福祉法人や介護事業所運営業者が、その一環としてベンリーをフランチャイズ経営していることもあり、新しい生活介助の形として注目されています。

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いずれにしても要支援者のサービスが自治体に移行し、現行の介護保険制度は「重症度者」を支えていく制度になろうとしている中で、こうした軽度者を支えるサービスは絶対的に自由度が増し、マーケットが拡大すると予想できます。

介護事業は医療と同様に公共性が高いので、「利益」を求めてはいけない風潮もありますが、株式会社としての事業所も多く、事業としてやっていく以上、利益を求めるのは必然です。

大切なことは、利用者が納得感を得られる「費用に見合った成果」を出していくことだと思います。

こうした既成概念に囚われない取り組みが、介護事業の倒産件数を減らし、必ずや介護や介護周辺産業を日本の成長産業の旗印に押し上げると思います。

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