介護福祉士「出願者数半減」の衝撃!!何が原因なのか?

2017.1.29 在宅介護
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hosokawa

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最近、介護業界で良いニュースが聞かれません。

昨日も介護事業所の倒産件数が嬉しくもない右肩上がりである記事を書きました。

この問題については「徹底的に生産性を高めること」が解決策の一つになると提案をしましたが、

そうは言っても絶対的に介護に従事するスタッフの数は増やしていく必要があります。

しかし!しかし!

一昨日、とんでもないニュースが目に飛び込んできました。

<介護福祉士>出願者半減…「受験資格に研修義務」が要因

毎日新聞 2017年1月27日

なんと、介護を担う軸となる介護福祉士の出願数が半減したというのです。

なんという・・・・・

半減の原因は何なのか?

その原因としては、

今年度から受験資格として実務者研修が義務付けられたのが要因とみられる。

と関係者は説明しています。

もう少しわかり易く説明をすると、これまでは3年以上の介護職としての実務経験があれば受験資格を与えられていたものの、今年から自己資金をはたいて「320時間から最大450時間の研修」を受けなければいけなくなったというものです。

介護の質を担保する

医療的ケアも行えるようにする

という意図があっての変更なのはわかりますが、

慢性的に人手不足が続いている中においてあまりにも理論・理屈が先行しすぎた考えじゃないのか?

と、いう見方もできます。

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介護福祉士の現状とこれから

介護福祉士の数に始まった話ではないですが日本の問題は「少子化」による「労働人口の減少」だと言い切れます。

高齢化そのものが問題というよりも「少子化」が大問題になります。

つまり、高齢者が増え続けても根本的に支える人口が減り続けるという問題です。

わかりやすい例を挙げれば、総務省の調べでは「65歳以上1人を支える生産年齢人口は、2010年時点で2.77人だったが、2060年に1.28人となることが見込まれている」とされています。

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(出典:総務省 我が国の労働力人口における課題

その中で介護職員を増やすのは至難の業とも言えます。

しかし、以下の表にもあるように平成37年度には今より70万人以上必要と推計されている状況もあるわけです。

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(出典:厚生労働省

また、現状のペース(表中のカッコ内の数値)でも厚労省が見込む推計値には追いつきません。

こうした中でも介護の軸を担う「介護福祉士」を増やしていくにはどうするかを考えていかなくてはなりません。

現在、介護職員の中で「介護福祉士」の割合は4割弱です。

厚労省はこの割合を5割程度にまで引き上げたいと考えています。

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(出典:厚生労働省

平成26年に開催された「福祉人材確保対策検討会」にて以下のように介護福祉士の割合を高める方針を打ち出しています。

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(出典:厚生労働省

この方針から厚労省の思惑を引用すると、

①:労働力人口の減少下において、介護福祉士を重点的に投入していく必要
があり、将来的には機能分化と介護福祉士の役割の明確化が必要。

②:未経験者を含めたすそ野の拡大、多様な労働者属性に応じたキャリアパス
支援を進め量・質の確保を促進。介護福祉士は、5割達成を目指し、そのため
に必要な措置を講ずる。

と、なります。

今回の「介護福祉士出願数が半減」というのは、こうした政府の思惑を否定する結果となり、まさに寝耳に水!?状態といえるかもしれません。

しかし、「明確なキャリアパスがない」「依然として給与が低い」「介護の仕事のイメージが良くない(3Kのイメージがある)」中ではある程度予想できた結果といえるかもしれません。

 

そもそもの問題は、介護福祉士の有資格者が従事していないこと

そもそも論にはなりますが、介護福祉士や看護師の人材不足の大きな問題は「有資格者の従事率が低い」という点です。

介護福祉士の従事率は以下のようになっています。

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(出典:厚生労働省

割合でいえば、平成12年が「62.4%」であったのが平成24年では「58.9%」となっています。

この数字を高めていくことも出願者を増やすのと同時に重要になります。

一方、ポジティブなデータとして勤続年数が長くなると、介護福祉士の資格取得の比率も増える(厚労省アンケート)というデータもあります。

若者が介護の仕事に魅力を感じ、介護業界で長く働き続けられる「環境づくり」を進めることが、介護福祉士出願者を増やし、従事率を高める前提条件になると考えます。

介護福祉士を増やすにはどうしたらいいか?

現在上がっている政府案としては、大きく

・「処遇改善加算」など処遇面の改善

・資格の統合化

・明確なキャリアパス(認定介護福祉士など)の構築

が挙げられます。

処遇改善加算はもうすでに実施されていますが、社会保障費全体が引き締められている中で「その予算をいかに確保するのか」、「施設によって給与まで反映されていない」など、決して優れた対策とは言い切れません。

もちろん、給与が上がれば離職率が下がり、希望者数が増えるという見込みはできますがある一側面にしか過ぎません。

資格の統合化については、フィンランドの「ラヒホイタヤ」という統一資格制度を参考に厚労省が打ち出した策ですが、「日本の制度設計にあっているのか?」「専門性の乖離が生じていないか?」などの問題が噴出し、現在のところ資格を取得しやすくなる程度(科目の免除など)に落ち着きそうです。

最後に、明確なキャリアパスですが、厚労省は以下のようなキャリアパスの構造転換を考えているようです。

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(出典:厚生労働省

ここにあるように、子育て中・後の女性層・若者層・シニア層を一体的に取り込めるように裾野を広げることは非常に賛成です。

これに関しては、子育て中・後の女性層やシニア層はワークライフバランス重視の体制、若者層にはキャリアパスや魅力的な将来展望重視の体制など、層に応じた異なる体制構築も重要と考えます。

また、専門性を高め、専門分化を図り、高度人材をつくり出すことも非常に賛成です。

これにより「頑張った人が報われる(インセンティブ)」という見せ方はキャリア構築において重要と考えます。

一方で、この問題の根本解決に向けては「仕事に見合った対価を受けられる産業構造の構築」が絶対に必要と言えます。

仕事に見合った対価とは「やりがい」も非常に重要ですが、やはり「給与」の因子が大きいのではないでしょうか。

その給与を上げるには、社会保障費は最低限のセーフティネットと位置づけ、それに依存することなく混合介護などを積極的に行っていくことが産業全体を押し上げる意味でも大事と前回の記事でも書きました。

介護福祉士がそうした旗振り役を担え、対価をしっかりと受け取れる構造にしていくことは健全な競争を促し、魅力的な職業として介護福祉士を推し上げていくと考えます。

最後に、、、

「介護福祉士」という名前についてもイメージ力アップのために変えてもいいかもしれませんね。

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