最近良く耳にする「リテラシー」という言葉。
この言葉の意味は知っていますか?
このリテラシーに関して「健康(ヘルス)」という点と関連させて考えていきます。
リテラシーとは何か?
近年、「ヘルスリテラシー」が健康と密接に関連していることが明らかになったことで注目され、最近では日本でも重要性が認識されてきています。
今回はこの「ヘルスリテラシー」の概要を説明したいと思います。
「リテラシー」とは、OECD(経済協力開発機構)で「社会に参加し、自らの目標を達成し、自らの知識と潜在能力を発揮するために、書かれたテキストを理解し、評価し、利用し、これに取り組む力」と定義されています。
ここで必要とされている能力を「情報」の視点から整理すると、
①自分に必要な情報にアクセスして「入手」し、
②そこで入手した情報を「理解」し、
③それが信頼できる情報であるか「評価」し、
④選択した情報に基づいて意思決定をして行動に移すことで情報を「活用」する
このようなプロセスと考えられます。
このような情報の「入手」「理解」「評価」「活用」という4つの力は、「情報リテラシー」と呼ばれています。
日本人はヘルスリテラシーが高くない
ここまでの説明から「ヘルスリテラシーとは何か?」といえば、「健康情報についての情報リテラシー」ということになります。
つまり、「健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力」のことで、
それによって日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるものと言えます。
問題なのは、日本におけるヘルスリテラシーの現状が高くないこと。
ある研究では、ヘルスリテラシーに「問題がある」人の割合はヨーロッパ47.6%、日本85.4%と、ヨーロッパよりも多く、ヘルスリテラシーの4つの能力のうち、特に「評価」「活用」の項目で差が大きく、「理解」まではできたとしても、意思決定して行動に移せないことがわかりました。
ヘルスリテラシー格差による影響
ヘルスリテラシーが「不十分」であることで、健康に対して以下のような影響が生じることが明らかになっています。
・予防サービスを使用しない
・病気、治療、薬の知識がない
・ラベルやメッセージが読み取れない
・医学的な問題の最初の兆候に気付きにくい
・長期間または慢性的な病気を管理しにくい
・保健、医療の専門職に自分の心配事を伝えにくい
・医療費が高くなる
ヘルスリテラシーを向上させるには
では、ヘルスリテラシーを向上させるにはどのようにしたら良いのでしょうか?
ヘルスリテラシーの形成要因には個人的な影響と社会・環境的な要因、さらに市民・患者と保健・医療システムの相互作用があります。
つまり、ヘルスリテラシーを向上させることは、個人のみに要求されるものではなく、提供者側または地域組織、行政などが環境因子に働きかけることが重要な要素となります。
具体的には、受け手に伝わりやすいような情報を発信すること、情報にアクセスしやすい様にICなどを活用すること、ソーシャルサポートを充実させること、コミュニティや集団を構築またはサポートすることなどが考えられます。
最近では、ヘルスリテラシー向上へのアプローチとして、「○○カフェ」「まちの保健室」「健康図書館」などの活動が盛んに行われており、
そこでは一人一人のヘルスリテラシーをめぐる経験について共有することで、多様な学びがあり、意識変容や行動変容にも繋がることも報告されています。
おわりに
このように、介護予防や地域づくりを行う際には、ヘルスリテラシーといった視点を持ち、一方的に情報を提供するのではなく、対象者や集団が情報を「活用」できるところまで関わることを考えることが必要ですね。
参考資料
ヘルスリテラシー 健康教育の新しいキーワード 大修館書店
記事提供
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