「運動」+「人の繋がり」が運動効果をもたらす方程式?

2017.5.9 在宅医療, 在宅介護
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地域包括ケアが始まってから地域単位で「予防」に向けた取り組みとして運動が多く実施されています。

一方で、地域単位での運動についてはまだまだエビデンスが確立されていません。

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本日紹介する研究は、そうした取組みにおける一つのヒントになるかと思います。

誰しも経験がある「自主トレ指導」

医療介護従事者の中でも特にセラピストは、一度は退院・退所前に家庭で実施する自主トレ資料を作成し、自主トレ指導を実施した経験があると思います。

 

これは、看護師、介護士に関しても経験があるかもしれません。


しかし、地域在住または退院後の高齢者は、どれくらいの方が、どれくらいの頻度で、誰と実施しているでしょうか?

 

また、運動は継続して実施できているでしょうか?

 

今回、地域在住の高齢者が運動を「1人で」もしくは「一緒に」する場合で、自分で感じる健康度が異なるかを検証した研究を紹介します。

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紹介する研究方法・結果・結論

●方法
日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトの研究の一つであり、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者21,684名のアンケート調査で主観的健康感(死亡率予測)と運動の頻度、誰とするか(家族・友人・仲間)について聞いた。

●結果
アンケート対象であった高齢者の中で、運動している人の割合は約6割程度で、運動を「1人で」のみ実施する人が18.1%、「1人で」が多い人は10%、「1人で」と「一緒に」の割合が同じくらいが11%、「一緒に」が多い人が8.9%、「一緒に」のみが12.6%であった。

運動をしていない人と比べ、何らかの運動をしている人はいずれも「健康でない」と感じている人の割合が、統計学的に有意に低かった。

また、「1人で」のみ行っている人と比べ、「一緒」に行っている人(「1人で」が多い人、同じくらいの人、「一緒に」が多い人、「一緒に」のみの人)は、「健康でない」と感じている人の割合が、統計学的に有意に低かった。

●結論
運動を1人でするのも、家族や友人と一緒にするのも、どちらも健康に良さそうである。

とりわけ、家族や友人と一緒に運動する人は、1人で運動する人より、自分で感じる健康度が高く、ひいては死亡リスクが低減する(つまり長生きできる)可能性がある。

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「運動+人の繋がり」の重要性

この研究結果から、高齢者に運動を勧める際には、運動自体の効果に加えて、運動を通した人とのつながりにも着目する必要があると言えます。

 

人々同士・組織同士のつながりは「社会関係」を資源としてとらえる事ができ、地域のさまざまなつながりが「地域の力」となり、さまざまな課題の解決の役立つことが期待されます。

 

これを可能にするには、家族と共同して運動を実施する事や、徒歩で行ける程度の距離に運動ができる通いの場を設置する、等の工夫が必要になってきます。

 

また、病院から自宅へと退院支援をする際、自主トレを指導したり、フォーマルな介護保険サービスへと繋いだりすることが一般的ですが、

 

ある程度自立している方には、インフォーマルな自主グループ、趣味グループ、サロン等を紹介し、楽しみながらみんなで運動を行う環境へと導くことも選択肢の一つと言えるかもしれません。

共に生きる

おわりに

地域で運動指導に関わる専門職は「長続き」させるために、健康体操だけではなく、楽しくて多彩なプログラム・メニューを考案する必要があると言えるでしょう。

参考資料

JAGESプロジェクト プレリリース資料

記事提供

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