「健康格差対策」の7原則とは?

2017.6.1 ライフスタイル
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hosokawa

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近年のトピック「健康格差問題」

近年、容認できない健康格差(地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差)があるというエビデンスが蓄積されており、WHOや厚生労働省の「健康日本21」などで、健康格差の縮小が謳われてきています。

 

健康格差縮小を実現させるには、実際に健康格差対策を「始める」「考える」「動かす」ことが必要であり、

 

そのために前提となる問題意識や状況認識、対応の原則などに関する共通基盤が求められます。

 

今回は健康格差対策の共通基盤として考えられている「健康格差対策の7原則」をご紹介します。

健康格差

第一原則:課題共有

健康格差を縮小するためには、対策に向けた取り組みを行う全ての関係者が、健康の権利や健康の公平性などの理念を共有し、実際の政策や実践に反映させなければなりません。

そのためには、人々の健康状態を把握・分析するための「見える化」や科学的な知見などの情報を活用しながら、健康格差の背景にある所得や教育の差、地域での社会関係やライフコースなど健康格差の要因となる様々な課題を共有することから始める必要があります。

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健康「情報」の格差は健康格差に直接影響します。そのため、関係者全員が情報を共有すること、課題を共有することは取り組みの前提として非常に重要です。

第2原則:配慮ある普遍的対策

健康格差は、社会的に不利な立場に置かれた人々ほど深刻ですが、全ての階層で見られるものです。そのため「より不利な人々」と「すべての人」の両方を対象とした取り組みが必要になります。

①集団的アプローチ(社会環境を改善し、集団全体のリスクを下げる手法)

②弱者集団アプローチ(特に手厚く対策を取るべき集団を選定し、重点的な対策をほどこす手法)、その両方を組み合わせた

③配慮ある普遍的アプローチ(社会的に不利な度合いに応じて、対策を強める手法)が重要です。

格差

アプローチを考える時に「特定の対象のみ」にフォーカスをすると効果が限局的になると容易に予想ができます。

全てに適した万能な手段を講じることは効果がボヤケてしまうリスクもあるため、個別性を重視しながら、かつ包括的な手段を見出していくことが重要と言えます。

第3原則:ライフコース

健康格差には、胎児から、子ども、青年、壮年、老年期までの生涯にわたる経験(ライフコース)や各世代(ライフステージ)における、特有の要因が影響しています。

母体内での低栄養、就学前教育の欠落、家族の崩壊など、その要因は様々です。

全てのステージを視野に入れた対策が求められるのはもちろんですが、より前段階のステージの重要度が高く、体験条件や体験の質を高めることが大切になります。

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特に胎児期や子どもの時期の影響が、その後に与える影響に大きくかかわることから様々な角度から積極的なサポートが必要と言えます。

第4原則:PDCA

効果が大きい方法や効果検証を明らかにする根拠に基づくことで、各対策は効果が大きいものとなります。

長期・中期・短期それぞれの目標を設定し根拠に基づくことで、各種プログラムの位置づけと優先順位が明確になります。

PDCA

「PDCAサイクル」をとにかくスピーディに回しつづけることが最善解を見出す上では重要になってきます。

第5原則:重層的対策

健康格差対策には、国・自治体・コミュニティなど、いろいろなレベルでの取り組みが考えられます。

それぞれの取り組みだけではなく、それぞれの特性を活かして組み合わせた重層的な対策が必要です。

また、行政と住民との関係に変化が生じているため、対策としてソーシャルキャピタルの理解と活用が重要になります。

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「ミクロレベル」「マクロレベル」その間をつなぎ合わせるレベルなど全てにおいて一貫した対策が重要になります。

第6原則:縦割りを超える

健康格差対策には、社会的革新ビジョン、先進的な取り組みのモデル、情熱を持った市民活動家・行政官などの存在が重要です。

また、社会的イノベーション普及のためには、保健師などの専門職・起業家がネットワークコーディネーターとなって、市民、NPO、企業、メディア、行政などが繋がっていくことが重要です。

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熱意を持った人物は周囲を巻き込む上で本当に重要です。まずはそうした存在を前例主義に基づき「潰してしまう」のではなく、しっかりと意を汲めるような体制にしていく環境整備が重要です。

第7原則:コミュニティづくり

人々の健康には、様々な組織の様々な取り組みが影響を及ぼしています。

そのためには、健康部門以外の、福祉、教育、産業、都市計画など、他部門との協働なくしては健康格差対策の縮小は実現できません。

また、自治体などの公的部門だけでなく、NPOや企業など民間においてでも、健康を主目的とせずコミュニティづくりを目指している組織やグループを巻き込んだ協働も不可欠です。

さらに、専門家・担当者だけでなく、一般住民の参加も重要です。

すべての参画者にとってwin-winの関係となることが大切です。

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持続可能なモデルにするには「関わる人全てがWIN」になることが重要になります。

おわりに

以上のように、現状を把握・分析有した上で、効果的なアプローチ方法を考えることや、予防的な側面を捉え多世代への対策を考慮すること、重層的かつ多角的に取り組みを進めることが大切になります。

 

医療・介護専門職が地域づくりや介護予防活動を行う際にも、これらの原則を考慮して、短絡的ではなく根拠を持ってアプローチの方法を考えたり、

 

多様な視点から健康を捉えて、多様な担い手と共に健康格差の縮小に貢献できるようにしたいものです。

参考資料

健康格差対策の7原則 第1.1版、公益財団法人 医療科学研究所 自主研究委員会

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