今話題!?地域で支える「フレイル」予防

2017.9.8 在宅医療・介護用語, ライフスタイル
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加齢が進むに従って徐々に心身の機能が低下し、日常生活活動や自立度の低下を経て、要介護の状態に陥っていきます。

 

この心身機能の顕著な低下は虚弱(frailty)と一般的に呼ばれており、要介護への最たる要因となっています。

 

その虚弱のことを『フレイル』と呼ぶことが日本老年医学会から2014年に提唱されました。

 

「フレイル」を定義する上で不可欠な3つの要素

この新概念フレイルを説明するには、次なる3つの要素が不可欠です。

1.健康な状態と要介護状態の中間地点

2.しかるべき適切な介入により機能(予備能力・残存機能)を戻すことができる、いわゆる可逆性がある時期

3.骨格筋を中心とした『身体』の虚弱(フィジカル・フレイル)だけではなく、『こころ/認知』の虚弱(メンタル/コグニティブ・フレイル)、および『社会性』の虚弱(ソーシャル・フレイル)が存在することから、フレイルは多面的である

この新概念フレイルを踏まえ、今改めて従来の健康増進~介護予防施策を原点(特にその効果検証の視点)からみつめ直し、さらに新たな風を入れることが必要になります。

 

健康寿命の延伸が叫ばれている中、専門職および行政、そして国民すべてがこのフレイル対策の趣旨をしっかりと理解した上で、まさにパラダイム転換が強く求められています。

 

(photo by Fotolia)

「些細な老いの兆候」を地域でどう捉えるか

これらを背景に、千葉県柏市では、2012年に大規模高齢者フレイル予防研究『柏スタディー』(自立~要支援を対象、平均年齢73歳)を開始し、縦断追跡調査が実施されました。

 

これはサルコペニアの視点を軸に、「些細な老いの兆候」を多角的側面から評価する形で推し進め、最終的に「市民により早期の気づきを与え、自分事化させ、どのように意識変容~行動変容させ得るのか」という着眼点から出発しています。

 

そこには心身状態への学術的評価アプローチのみでなく、住民自身が意識変容、そして行動変容へと移り変わりやすくするための簡便なスクリーニング指標を確立することも進められました。

 

スクリーニング方法としては「指輪っかテスト」を含めたチェックシートが開発されたり、社会性の重要性を認識させるだけではなく、実際に元気高齢者がフレイル予防サポーター(担い手側)になり、住民主体で楽しい場を作り、気づき・自分事化する仕組みが作られました。

 

研究において、対象者を3群(健常群、サルコペニア予備群、サルコペニア群)に分け、数多くの評価項目を比較したところ、さまざまな身体機能低下だけではなく、歯科口腔機能評価、食品多様性をはじめとする食の偏り、生活に広がりや人との付き合いなどを代表とする社会性の低下などが強く関連していました。

 

このため、健康長寿の3つの柱として「栄養(食・口腔機能)」「身体活動(運動など)」「社会参加(就労、余暇活動、ボランティアなど)」に集約し、それらを三位一体として包括的に底上げし、フレイル予防に取り組まれています。

(photo by Fotolia)

おわりに

以上のように、介護予防を行う際にも運動面のみではなく各要素を包括的に捉え、バランスよく底上げを啓発しながら、住民の方に気づきを持ってもらったり、自分事化できるように地域全体で取り組みを進めることが重要になりそうです。

参考資料

・柏フレイル予防プロジェクト2025 柏スタディから見えてきたもの
・口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考案と検証 (地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業 事業報告書

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