近年喫煙者を取り巻く環境
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向け厚生労働省が「受動喫煙防止策」として病院や学校などを全面禁煙とし、飲食店は分煙以上とすることを義務付けた罰則を伴う対策案を公表するなど、近年喫煙者を取り巻く環境は変わりつつあります。
また「2017年全国たばこ喫煙者率調査」によると、
成人男性の平均喫煙率は28.2%
成人女性の平均喫煙率は9.0%
特に成人男性の喫煙率はピーク時に比べると減少し続けています。
たしかに、私が子供の時(20年数年前)と比べて喫煙者の数はだいぶ減ってきていると感じます。
しかし、精神科病院や障がい者支援施設等で、
精神疾患を持っている方たちの喫煙率の高さは、今もなお変わらず高い状態です。
精神疾患患者と喫煙
疫学的研究によると、
「精神疾患患者は健常者と比較して喫煙率が約2~3倍も高い」
ということが報告されています。特に米国における研究では統合失調症患者は一般人口の3倍も喫煙率が高く、また、1日20本以上摂取するヘビースモーカーの割合が高いことが報告されています。
では、なぜ精神疾患患者の喫煙率は高いのでしょうか。
喫煙率が高い原因は
この原因については、様々な説があり、
恐らく一つの原因によるものではないと考えられます。
”単調な入院生活において他にやることがないから”
”閉鎖病棟に喫煙室が設けられており喫煙自体が当然のものとして認められていた”
このような環境的な要因の影響も大きいでしょう。
様々な説の中で特に興味深い説が
Self-medicaton(自己治療)説です。
ニコチンが認知機能に与える影響
Self-medication説では、このように指摘されています。
「喫煙により、血中ニコチン濃度が高くなることで、ニコチン性アセチルコリン受容体(摂取されたニコチンが結合し作用する受容体)が刺激され、最終的にドーパミンが増加する。ドーパミンが増加することにより抗精神病薬の副作用が軽減される」
また副作用の軽減効果以外にも、ニコチン性アセチルコリン受容体と統合失調症との関連について多くの研究がなされており、ニコチン摂取による統合失調症患者の認知機能(記憶、注意、計画立案、判断などの機能)に対する改善効果も多く報告されており、ニコチンが統合失調症の新しい治療薬として期待されています。
悪影響は…
しかし、ニコチンによる症状改善効果の可能性があるとはいえ、
タバコにはニコチン以外にも数千種類ともいわれる有害物質が含まれており、
心疾患や循環器疾患のリスクに対する喫煙の寄与などの健康面での問題もあります。
またタバコの値上がりも進んでおり、経済面での困窮する原因になり得るものです。
まとめ
タバコに含まれているニコチンに、統合失調症の認知機能障害を改善させる可能性はありますが、タバコそのものを薬として用いることは難しそうです。しかし、一般的には「身体に悪いもの」と言われているものの中に、まだ知られていないメカニズムにより治療薬としての可能性を秘めた物質があるかもしれません。
(その逆も言えるかもしれませんが・・・)
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