「違う仕事を経験して初めて、こんな作業療法士になりたいと思えた。」
「自分の目標に近づいている感覚が得られていて、毎日ハッピー。」
そう語るのは、作業療法士の竹内大岳さんだ。
竹内さんは、新卒で病院の作業療法士として入職したのちに、アパレルや建築、飲食店など全く違うジャンルの業界への転職を経験。
そして今年の春、自身の夢の為に作業療法士としての業務に戻られたというとっても変わった経歴をもたれた方です。
今回は、理想の作業療法士像ができ、作業療法士に戻るきっかけとなった”きっかけの日”のことを伺ってきました!
日々目標がなく、仕事が作業に
ー作業療法士という職から離れた理由はなんですか?
OTやPT,看護師などといった専門職は学校に入学する際に、ある程度自分は将来この職種に就くんだと思って入学してくるわけですよね。
だから、本来であれば働くイメージをしながら学校で学ばなければいけないのに、勉強に、実習にととにかく忙しいので目先のことをこなすことに一生懸命になってしまうんです。
そして、最終ゴールを「国家試験合格」とおいてしまい、試験に合格すると燃え尽きてしまう人が少なからずいると思います。
私は典型的な燃え尽き症候群の一人でした。
そんな燃え尽きた状態で入職したので、今考えると本来であれば患者さん一人一人に向き合っていかなければいけないリハビリを、ただ決められたプログラムを「こなす」だけの、単純作業として処理してしまっていたような気がします。
そんな単純作業としてのリハビリを続けていく日々なかで「このままではだめだ」と思うようになっていったんです。
かといって作業療法士としての働く目標や夢などがでてきたわけではなかったので、
もういっそのこと自分の「好きなこと」だけを考えてやってみよう!と思い転職しました。
好きなことを仕事にしたらどうなるんだろうってことを単純に知りたかったんです。
シアトルで過ごした1日が、作業療法士に戻るターニングポイント。
ー医療業界を離れてからはどんな業界でどんな仕事を?
いろいろやりましたね。その中で一番長かったのは、建築系の会社でした。
アメリカで家の建材ととなる素材やアンティークのインテリアなどの買い付けをして、日本で販売していました。
もちろん大変なこともたくさんありましたが、好きなことができて楽しくハッピーな毎日でした!
ーそんなに楽しい仕事だったのに、なぜ作業療法士に戻ったんですか?
実はそれには、”きっかけの日”があるんです。
買い付けの仕事でアメリカのシアトルに 行った日のことです。
シアトルは、人が多い街なのですが古い街で、さらにすごく急な坂道が街のど真ん中にあるようなところです。
また、シアトルはスターバックスの発祥の地でもありカフェ文化が盛んです。
でも、日本では当たり前に見かける自動扉などもシアトルの街ではあまり見かけず、多くのお店は木製の重い扉でした。
そんな街で、ふらふらしていて見るからに不安定な歩行をされている方が、カフェに入ろうとしているところを見かけました。
案の定、本人では扉を開けられず大変そうです。
そういう人がいる時は、お店側が配慮するべきでその人をエスコートするのは店員の仕事だと思うのが日本の感覚ではないでしょうか。
でも、その時に助けていたのはお店のお客さんだったんです。しかも、そういう光景を1日に何度も目にしました。
たくさん目にしたのはもしかしてたまたまだったのかもしれませんが、私にとってはとても新鮮な光景でした。
自分にできることって直接障害や怪我している人を支援することだけでもないんだ。
そうじゃない人(健常な方)にも知ってもらい、障害や福祉に対しての意識改革を促すという支援もあるんだなと思ったんです。
そして、その日に30歳になったら作業療法士に戻ろうと決意し、生活し始めました。
専門職だからこそ未経験のところに安心して飛び込める
ー作業療法士に戻ろうと決めてから物事の考え方や捉え方は変わりましたか?
変わりましたね!
極論言えば、それまでは売れなくても自分のそれを分かってくれる人だけ買ってくれればいいとちょっと尖った考え方をしていました。(笑)
でも、作業療法士としての気持ちが芽生えた後は、自分本位な思いは置いといて…
お客様がどういうものが好きだとか、相手の想いをどうやったら形にする支援できるのかって ところに重点を置くようになりました。
作業療法士に戻ってまだ半年。
成果として出せているかはまだ分からないですが、 思い描いているところに一歩一歩近づいている感覚はあります。
だから、それを考えると学校を卒業して病院に入職して転職して…といろんなところで得た経験は全て必要な経験だったと感じています。
ー「資格=自分の仕事」と制限をかけてしまう人も多いと思います。どうしたらポジィティブに仕事に向き合えますか。
仕事は本来「誰かのために」「何かのために」行うもの。
その「誰か」「何か」が見つからずに、働くことに対してネガティブになってしまっている人がたくさんいます。
まずは、「なぜ働いているのか」を見つけられるアクションをしたら良いと思います。
そこに意義を見つけた人は強いし、それが決まるとよりハッピーな人生になります。
仕事は人生の3分の1を占めると言われるくらい自分の人生にとってとても重要なものですから。
よく「我慢していれば、その先に光が見える」という人がいるんですが、私はそれはないと思っています。
悩みながら我慢していていてもなにも変わりません。なにか思いがあるならば、小さいことでもなにか行動してみたらいい。
見つける方法は人それぞれ。自分の場合は、「今までの仕事から離れる」というアクションで見つけることができましたが、それが全てなわけではありません。
例えば、今まで我慢していた気持ちと向き合って、誰かに相談する。
例えば、あんまり話す事がなかった同僚とご飯に行ってみる。
ちょっとした行動で思いがけないヒントが手に入り、大きな変化につながることはたくさんあります。
1ミリでも動いたら、絶対何か変わります。
もし、自分には「この道しかない」と足踏みしている専門職の方がいれば、
「資格持っているからこそ、いつでも復帰ができる。 だから、安心して未経験のジャンルに飛び込んでみればいい」と伝えたいです。
離れて分かることはたくさんあるし、違う仕事をしてみて自分に合っているものや、目指すべき先が見えてくる場合もあります。
僕の場合は、色々経験した末に目指すべきものがつかめたし、それを叶えられるのが作業療法士という仕事だったから
今は、すごくポジィティブに作業療法士として仕事ができているし
ものすごくハッピーです!
編集後記
竹内さんの話にもありましたが、仕事は人生の3分の1を占めます。
また、定年の年齢も60歳から後ろ倒しになっている今の社会では、長い目で自分のキャリアを描いていく必要があります。
まっすく進んだ先に山や壁が立ちはだかったときに、それに向かって進んでいくのも一つの道ですし、回り道をしたり寄り道をしたりするのも、また道なんですね。
年を取るにつれて「自分はこういう人間だ」とか、「自分のできることはこれだ」とか知らず知らずのうちに自分の型を作りその型から抜け出せなくなっている人がたくさんいるように感じます。
しかし、よく考えたら自分で作り出したものなのだから変えるのも自分次第なはずですよね。
専門職としてではなく、一人の人間として自分の時間・人生の使い方を考えていくことが、楽しく仕事をするポイントなのかもしれません。
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