引き続き、金沢QOL支援センター、代表取締役であります作業療法士の岩下琢也さんのインタビューをお送りします。
目次
今後はどのようなビジョンなのでしょうか?
そうですね。
私たちは中期ビジョンとして
「地域で医療‐介護を創造し、世界へ発信する」
というビジョンを掲げています。
どういうことか詳しくお伝えしますと、
現在、弊社は名古屋と金沢で事業を担っているのですが、「地域包括ケアシステム※1」を国、そして各地域で推進していく中で、私たちもその地域包括ケアシステムの中で如何に「強み」を活かして役割を担っていくか。
ということが非常に重要だと考えています。
※1 地域包括ケア:重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を人生の最後まで続けることができるよう、住まい-医療-介護-予防-生活支援が一体的に提供される仕組み
しかし、2025年問題と言われるように、日本国における医療‐介護サービス、福祉の提供に関しての財政、及び諸制度は必ずしも明るいものではないと予測しております。
その時代の変化の中で、私たちは地域で新しい医療‐介護サービスを創造していかなければならないと思っています。
新しい医療‐介護サービスとは何でしょうか。
では具体的な話をしますね。
今は例えば訪問看護、訪問リハビリなら1時間で8,000~9,000円程度の報酬が事業所の収入となります。しかし、利用者さんから実質頂いている金額は1割~2割(介護保険)なわけです。
もし、これが10割になったらどうでしょうか。
果たして利用者さんは【今のサービスの質】で8,000~9,000円の価値をきちんと感じ、お金を支払うでしょうか。
本来、全てのサービスというのは「価値」と「価値」の交換です。
今は極端な話しですが、「1時間の医療・介護サービス」と「800~900円」を利用者さんとは交換しているわけですから、いきなり10割となれば相当厳しい状況になるでしょう。
そこでこれからの時代。
まさしく真剣に考えなければならないのが、
診療報酬、介護報酬に依存しない「民間サービスとしての医療‐介護」だと考えいます。
これらは必ず私たちは切り開いて行かなければいけないミッションの1つだと思っています。
まだ弊社では具体的な民間サービスの事業化の詳細は決まってはおりませんが、キーワードとしては「予防医学」「派遣」「ロボット」であり、そして間違いなくコメディカル職の活躍の場は医療‐介護の現場にとどまらず、「社会」が舞台になっていると予測しています。
コメディカル職、セラピストの知識、技術は本当に素晴らしいものだと思っています。
それをもっともっと地域、社会に発信しなければなりません。
それが専門職としての今後のミッションになるのではないでしょうか。
では、世界に発信する?!とはどういうことですか。ちょっとぶっ飛びすぎじゃないですか?
自分としては全然大真面目で、ぶっ飛んでいるとは思ってません!(笑)
私はポジティブな方なので、いつも “高齢化問題” “超高齢社会” という言葉をメディアで見るたびに
「すごい!!さすが日本!!世界一長寿国って素晴らしい!!」
「世界で例をみない、超高齢社会の到来?! ―ということは世界一の”超高齢先進国”ということやん!日本これからの医療や介護サービスの仕組みは先進的モデルになるはず!!」
ということを考えています。
事実は一つ。解釈は無数ですから。考え方は自由です!笑
「日本の課題」という視点を、パラダイムシフトさせて考えれば、“超高齢先進国” という最高にワクワクする話になりますよね。
しかも日本は高齢化が進んでいると言われているヨーロッパと比較しても高齢化率は圧倒的なんですから…。
はい。
そこで私が考えていることは、日本が「ものづくり産業大国」として、世界に大きな価値を提供している中、次の時代に必要なものは医療-介護サービスという名の「おもてなし産業」であると考えています。
“超高齢先進国”で培われる質の高い地域医療-介護サービスを、世界に発信していくことで、大きな社会への価値に繋がるのでは。と思っています。
そして私としてはやはり今後の日本の地域医療-介護の危機的な課題は「財政難」と「人材不足」だと思っています。
一方、アジア圏に関しての課題はおそらく各国の状況にもよると思いますが、そもそもの医療技術不足、医療インフラ不足(人・物共に)が課題と考えております。
この双方の課題に対して、おそらく日本の医療メンバーがイニシアティブをとって、アクションしていくことで双方がWINWINになり得ると予測しています。
世界への発展に向けて、具体的に何処の国で何をすんの?ー
というのは現時点では明確ではないのですが、キーワードでいうと「医療人材教育」「人材交流」「障がい者雇用支援」「人材派遣」等ですね。
この仮説を立てた上で、地域医療や障がい者就労支援の発展を各地域(金沢、名古屋)で推進するとともに、私たちは2~3年後に本格的に「海外事業調査部」となるような部門を法人内で立ち上げ、まずはその部隊でアジア各国のニーズ、事業機会の調査を明確にしていきたいですね。
もちろん、その調査部隊は日本の地域医療に携わった、看護師、PT、OT等でメンバー編成、選任をし、地域医療、在宅支援をある程度わかった上で、そのメンバー達が中心になって明瞭なマーケティングや課題調査を行います。
そして、どの国に、何を、どのような形で、、、。
という事業計画を描いてもらいます。
社内のリーダー、メンバーの意向や、マーケティング調査の結果、そしてその上で作成した事業プランによって「どの国で何をするか?」が左右されると思いますが、直感的にはどの国であってもそれが結果的に日本の地域医療にもプラスになる活動ができるのではないか。と考えています。
海外法人設立は2021年と決めているので、それまでにますますしっかりと名古屋と金沢を中心に地域医療や障がい者就労支援を発展させて、私を含めてスタッフ、社員、障がいスタッフ皆で成長していきたいですね。
最後に一言お願いします!
長いお話に付き合って頂いてありがとうございました。
ちょっと最後に深い話なんですが、
今までのお話でなんとなーくわかったと思うんですけど、
別に私はただ「海外に行きたい!」 ―てわけでは実はないんです。むしろ英語喋れないしな、、、。
でもこのような中長期のビジョンを持つことで、
社会への価値 = 皆の幸せ
という最も大切な軸に沿って法人が生きることができます。
そして一番大切な目の前にいる利用者さん、障がい者さんを「ずっと」幸せを提供するためにも必要なビジョンだと強く思っています。
また、私個人の願望である
「大切な人達と夢を叶え合う」
という願望も実現されていきます。ー
「大切な人」。
一番は一緒に仕事をしている社員の皆さんです。その中には障がいのあるスタッフも数十名います。
その皆でお互いの夢、願望を叶え合いたい。
なので厳密にいうと
「地域で医療‐介護を創造し、世界へ発信する」
というビジョンもあくまで目的ではなく、手段なんですよね。ー
編集部より インタビューを終えて。
はい。
今回は金沢QOL支援センター、代表取締役でおられる作業療法士の岩下琢也さんを取材させて頂きました。
とてもユニークで大変表情が豊かで面白い方でした。
最後に。
小さいころのエピソードと今の「生き方」が本当にリンクし、強い信念をもった方だと感じました。
小さいころのお話を伺っている時に、岩下さんはこんなことを言っていました。
小さいころの思い。ー
なんで自分ばっかり病気なんだろう。つらい。
なんでまた入院しなきゃいけないの。
ちょっとくらいしんどくても大丈夫やから、入院したくない。
つらく、しんどく、寂しいことがたくさんあったようです。
何度か入院したときのことは全て覚えており、退院して家に帰れることは、本当に毎回嬉しかったとのことです。
岩下少年が大きくなり、
病気や障がいがあってもできる限り入院せず、地域で、社会で活躍できるように支援していること。
これは岩下さん自身が小さいころに体験したことが信念となり、軸となり、そして形となって展開されていることなのかもしれません。
以上、コメディ編集部でした。
※コメディではコメディカル職の方で地域で活躍している人、変わった活動をしている人、面白い人をインタビューさせて頂いております。
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