ばあちゃんが、家からいなくなった

2015.12.3 いい話
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ばあちゃんが一人で暮らしてた頃の話。

田舎に限らず、高齢者の一人暮らしは、よくある話だと思う。

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とある日。

夜9時ごろにばあちゃんの家に帰ってみた。

 

誰もいない。

電気はついているけど、ばあちゃんの姿が見当たらない。

ばあちゃんは認知症の初期で、たまに同じことを何回も聞いてくるけど、自分でご飯も食べるし草むしりもする。まだまだ元気だ。

そんなばあちゃんが、いない。

 

部屋、台所、仏壇・・・

家の中のどこを探しても見つからない。

夜なので外は真っ暗。田舎なので周りは田んぼしかない。こんな時間に草むしり・・・なわけないよな、と外を探すも、見当たらない。「ばーちゃーん」と言っても、返事がない。

どこに行ったんだ・・・

 

月明かりがあるだけで、真っ暗。

周りに田んぼがあるということは、用水がある。家の周りにあるのは小さい用水で、水深も浅いのだけど、油断できない。

というのも、毎年、高齢者が用水に落ちて亡くなっている。

あんな浅いところでどうやって溺れるのか、なんて昔は思ったもんだが、こんな真っ暗で足を踏み外して落ちてしまったら、打ち所によっては・・・というのも想像に難くない。ましてや、うちのばあちゃんは膝が悪い。転んで骨折したこともある。危険だ。

でも、家の中にいなければ、外しかない。

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草むしりしてそうな家の周りを、ぐるっと回ってみた。

いない。

やっぱり中かな、と思って、家に戻ってみた。

が、いない。

中にも外にもいない。けど、いないわけがない。必ずどこかにいるはず。

電気もついてる、部屋も暖かい、ってことは、ちょっと前まで部屋にいたってことだ。

自転車も乗らないから徒歩でしか移動できない。

外にいるとしたら、歩ける範囲内だ。そう思い、歩いて探しに出てみた。

 

こんな時間に他人の家には行かないだろうから、(だとしたら電話がかかってくるだろうし)、行くとしたら公民館かな・・・と、真っ暗な道を、公民館のほうに向かって歩いた。

 

スマホの照明を頼りに、150mくらい歩いただろうか、向こうから小さい人影らしきものが、こっちに近づいてきた。

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あっ、ばあちゃんだ

ホッとしたのと同時に、なぜこんなところまで歩いてきたのかという疑問が沸いてきた。懐中電灯も持たず、真っ暗な道を、かすかな月の明かりだけで歩いてきたようだ。視力も悪いのに・・・

とりあえず無事そうだったので、なんでこんなところにいるのか聞いてみたら、「孫(筆者の妹)の帰りが遅いので、帰ってくるのを待つために通りの方まで歩いていった」と。

ばあちゃん、妹は何ヶ月も前に結婚して、もうこの家にはいないんだよ・・・

 

これがいわゆる「徘徊」なのね、と。

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今回は悲しい結果にならなくてよかった。

それ以来、夜にばあちゃんを一人にさせないように、夜は必ず誰かが家にいるようになった。それからは、夜中に外に出ていくことはなくなったようだ。

世の中には、同居してても・・・なケースもあると思うし、状況も様々。

けど、「パッと見、元気だし、うちは大丈夫だろ」なんて思ってても、それは都合のいい思い込みでしかない。できるだけ一緒に暮らした方がいいな、と改めて思わされた。もしそうなってからでは、遅い。

 

いつまでもあると思うな親と金、無いと思うな運と災難

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