「幻聴は聞こえますか」
統合失調症患者に対して優しく問いかける支援者がいます。
「はい、幻聴、聞こえます」
と答える統合失調症の当事者。
意外に、よくある光景なのかもしれません。
しかし、統合失調症の当事者は内心腹を立てているかもしれません。
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私が上記の質問をぶつけられたとき、やはり、同じように「はい、幻聴、聞こえます」と答えるのですが
そこには、筆舌に尽くしがたい「譲歩」があります。
私が、「いや幻聴じゃないんです」と言ったら話がややこしくなって話が並行線をたどることが目に見えているので
そう答えているだけです。
お気づきの方もおいでるかと思いますが
統合失調症の当事者は「幻」と言ってはいけないくらいはっきりとリアルに声が聞こえています。
その話し声の内容は、本当に腹の立つ内容であることが多く、その内容から気分を悪くされている患者さんも多いのです。
自分の悪口を言ってくる連中(!)に対して怒りや不快感でいっぱいな上、「あなたは幻聴が聞こえますか?」という聞き方では
「あなたの聞いてる声は幻覚ですよね」
「あなたは病気ですよね」
「あなたの側に声(悪口)が聞こえる原因があります」
「それを認めましょう」と言われているようなものだから
不快感という火に油を注ぐような聞き方になってしまっているのです。
実際、「幻聴が聞こえますか?」という質問に対して
「そうじゃないんだって!」
「幻聴じゃないんですよ、本当のことなんです」
と答える方もおいでるでしょう。
当事者の側に病識があって、理性的な判断ができる場合は、支援者の質問に「はいそうです、幻聴です」という「譲歩」が可能です。
でも病識がなくて、思考障害のある間は
「幻聴」という言葉が癇に障り、腹を立てる当事者もおいでるでしょう。
病識を持たせるために、まずは信頼関係の構築
ちなみに
「幻聴が聞こえますか」という尋ね方は基本的にNG。
そうはいっても
統合失調症の当事者は客観的なものの見方を失っている場合が多いです。
「あなたは病気で、病気の症状で苦しんでいるんですよ」
最終的にはそのことを当事者に伝える必要があります。
そこで、その周囲の皆さんには次のような聞き方をしてほしいのです。
「幻聴は聞こえますか?」ではなく
「なにか嫌な話し声は聞こえますか?不愉快ですよね」
「悪口は聞こえますか?つらいですよね」
- 「幻聴」という言い方をしない
- つらい・悲しい・不愉快な気持ちを認めてあげる
たったこれだけで、統合失調症の当事者に「病人」のレッテルを貼らずに済むし、感情の刺激せずに済みます。
例えば、私のように
「誰かが私を監視カメラで監視していて、どこかの放送局から電波を送り届けている」と勘違いしている方もおいでます。
客観的な正しいものの見方(「あなたは病気で、病気の症状で苦しんでいるんですよ」)は統合失調症の当事者に伝えるべきです。
しかし、それよりも先に、支援者と統合失調症の当事者との間に信頼関係を築く必要があるのです。
かたくなに幻聴と認めない方がおいでたら
「押してだめなら引いてみる」ではありませんが
「それは幻聴だから」「あなたは病人だから」と言い聞かせるのをいったんやめて
「そうだね、悪口が本当に聞こえるんだね、腹立つよね、不愉快だよね」と言ってあげて欲しいと思います。
たったそれだけで、当事者と支援者との間に信頼関係が構築されて、素直に支援者の話を聞き入れるようになるのでは、と
私は考えています。
支援者が「幻聴」と決めつけてかかる態度
(たとえ本当に幻聴であったとしてもです。)
によって、患者さんと信頼関係が壊れたり、信頼関係を築くのに失敗することがあると私は思うのです。
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私の場合、病識を持ってからの回復は速かったですが
今でも、幻聴という言葉に違和感を感じます。
それは上記したように
あまりにも幻聴がリアルで
私の側に原因があると思いたくないくらい
幻聴は不快なものだからです。
医学的な知識のない当事者が
当事者目線で書いたので
しかも患者さんにもいろんな方がおいでるということなので
信じる・信じないの判断はお任せいたします。
しかし、さややが思うに
支援者に「幻聴は聞こえますか?」と言われて
「はいそうです、幻聴です」と譲歩している当事者は
意外に多いのではないでしょうか。
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