私が長い期間不快に感じていた「話し声」。
それが社会一般的には「幻聴」というくくりになるということを受け入れるまでに
少し時間が必要でした。
幻聴というと、ぼんやりしているものを想像される方もおいでるかもしれませんが
実際は限りなくリアルです。リアルそのものです。
- 目の前に女子高生がいて、口を開けて笑っている。「きもい」と言って私を攻撃している。
- 誰もいない部屋で同じ会社の人の話し声がする。
どちらも夢でも幻でもなく本当のことなのに、「幻聴」と言われたことに、最初はしっくりきませんでした。
「幻聴」と言われて薬を処方されても
「本当に私薬飲んで大丈夫なの?」
「こんなリアルなのに私を病人扱いしていいの?」
「倫理的・道義的にあっていいことなの?」
とさえ思ったものです。
薬を飲み、ながーい時間休養することで、少しずつ症状が和らぎ、私を攻撃する声が「幻聴」というくくりに分類をされることに納得をしました。
しかし、最初は正直言ってわかりませんでした。
こんなリアルなのに、なんで医療職はわかってくれないんだ!
幻聴、幻聴、っていうけど、人の気持ちをわかって言ってるのか!
人をそこまで病人扱いしたいのか!
私は幼いころから比較的穏やかな性格をしていると言われていたので医療者に怒ることはなかったですが、
これでは短気な人では怒り出すと思います。
被害妄想がさらに事態を混乱させる!
さらに症状が重い方は、医療職のことを信用しなくなってしまうので注意が必要だというのが私の見解です。
どういうことかというと、症状が重い方は考え方がかなり被害的になり、しかも思考障害によって支離滅裂なものの考え方をする傾向にあります。
例えば、
「私をどこかで誰かが見張っている。そいつは電波で私を支配しようとしている。そいつと医療職は仲間同士でどこかの秘密基地に出入りしている。」
といった具合です。
私自身も思考障害の重いときは、悪い出来事と悪い出来事を結び付けて独自の物語を作り上げていたものです。
医療職の皆様には、
統合失調症の患者さんと信頼関係を築き上げて頂きたいと思います。
そして、最終的には、病識を持てるような支援をしていただきたいと思います。
急がば回れで、
「あなたの聞いてる声は幻聴ですよ!」とストレートにいうのではなく、
「話し声が聞こえますか?つらいですね」と言ってあげることで、
患者さんが不快に感じる機会が減るのではないかと思います。
(「教科書には載っていない統合失調症―「幻聴は聞こえますか」はNG!?」をご覧ください!)
被害妄想がさく裂して独自の物語を作りあげてしまった患者さんも多いと思うので、
からかったり、論理の矛盾を指摘して笑ったり、茶化したりしないだけでなく、
くれぐれも患者さんをさらに混乱させることを言わないであげて欲しいと
思います。
そしてどうしたら、恐ろしい世界に迷い込んでしまった患者さんを救い出せるかを真剣に考えて頂けたらと思います。
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病識は誰かの説得によって一瞬で生まれるとは限らず、
いろんな体験の積み重ねで時間をかけて生まれるものです。
それは信頼関係を一朝一夕で築けないのとも似ています。
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