リハビリ専門職が地域で求められるポピュレーション介入の必要性

2017.4.26 在宅医療, 在宅介護
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hosokawa

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「健康格差」って聞いたことありますか?

最近、ニュースや新聞、雑誌などにも多く取り上げられている言葉ですよね。

この「健康格差」が所得や運動を含め様々な要因によりもたらされることがわかってきました。

本日は、「健康格差」についてリハビリ専門職としてどう関わっていけるかを考えていきます。

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ハイリスク・アプローチとは何か?

現在の日本は放置できないほどの健康格差が認められる社会となっており、それに対してミクロ(個人・家庭)レベル・メゾ(コミュニティー・職場)レベル、マクロ(国)レベルでの総合的な戦略が必要となっています。

その中で、ハイリスク者をスクリーニングして、その人たちを介入することで予防を進めようという考え方をハイリスク・アプローチといいます。

メタボリックシンドローム対策として行われている特定検診・保険指導や、すでに見直しが図られた基本チェックリストにより発見された、虚弱な(特定)高齢者を対象とした介護予防が典型的です

かつて結核対策などでは、ハイリスク・アプローチは大きな成果をあげました。よってハイリスクアプローチがメタボ対策にも介護予防にも適用とされていました。

しかし、異常者をスクリーニングして手立てをとるハイリスク・アプローチが有効なのは、次の4条件を満たす場合になります。

①リスクが比較的少数の特定の異常者に限ってみられる
②ハイリスク者をみつける方法が確立されている
③ほとんどのハイリスク者に対する長期間にわたり有効な治療法が確立されている
④それ(③)が現実的にほとんどの人に提供可能である

かつての結核対策などでは、これらの条件を満たしていましたが、生活習慣病や介護予防の場合には、これらの条件を満たしていません。

実際に、スクリーニングの費用がかかるわりに、要介護状態発生リスク者対象の介護予防事業参加者は、必要とされる高齢者人口の0.8%と少なく、介護予防政策の見直しの理由の一つとなっています。これは④の点を満たしてないことがわかります。

このように、上記4条件を満たさない介護予防や生活習慣病に対しては、ハイリスク・アプローチは本質的な限界をもっており、一部の人には有効ですが、全体としての効果が望めないのが現状です。

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今、求められる「ポピュレーション・アプローチ」とは?

では、どうしたらよいのでしょうか?

異常値を示す人にだけ介入するのではなく、正常とみなされる人を含めた集団全体を健康な方向へ近づける戦略があります。

これが、ポピュレーション・アプローチです。

タバコを例にあげると、職場・公共空間を禁煙にし、広告を規制し、タバコ代を1000円に上げ、さらには禁煙に職場ぐるみで取り組み、スポーツを気軽にできる機会を増やすなど喫煙に変わるストレス軽減策を提供することがポピュレーション・アプローチです。

今後、リハビリ専門職が地域で求められることは、ハイリスクな対象者を予防するような、ハイリスク・アプローチの考え方ではなく、環境介入型のポピュレーションアプローチを練り、その具体化を図り、効果検証を図ることが必要となります。

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 おわりに

現状、リハビリ専門職がポピュレーション・アプローチを具体化した取り組みは少ないですが、「健康日本21(第2次)」の最終評価が2022年にあります。

つまり5年で社会疫学研究やその理論や知見を生かした実践事例や、その効果に対する評価研究の実例を積み重ねるなかで、具体化を豊かにする必要があります。

残されている期間は約5年です。

医療、介護職としてできること、やれることはたくさんあります。

 参考:健康格差社会への処方箋

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