「本人の意思尊重」が医療・介護の現場で受け入れられつつある
近年、わが国でも治療に関する自己判断・自己決定が受け入れられつつあり、具体的にはセカンドオピニオン(注1)やリビングウィル(注2)が挙げられます。
*注1 セカンドオピニオンとは?:日本語では「第二の意見」と呼ばれるように、患者がある病気で診断を下された際に、診断結果やその後の治療方針や治療方法について、主治医以外の医師から意見を聞くことを言います。主治医以外の意見を聞くことで、現在の治療が適切なのか、他に良い治療がないのかなど、患者がより納得のいく治療を受けることが可能になります。(セカンドオピニオン.com)
*注2 リビングウィルとは?:「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。(日本尊厳死協会)
そんな中、人工呼吸器や心肺蘇生を中断する延命中止という新たな選択肢が広まっています。
2017年4月に日本臨床救急医学会にて、患者本人が延命を望まない書面を残している場合などに限り、患者本人の選択を尊重すべきであるとして、「人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言」を発表しました。
この提言により、心肺蘇生等を中止したこと後から責を問われたり、反対に心肺蘇生等を継続した結果「本人の意思を尊重しなかった」として責を問われる可能性を極力防ぐことを狙いとしています。
(photo by Fotolia)
「人生の最終段階」への会話がない社会
このように様々な場面で自己判断・自己決定を推進する仕組みができつつあります。
その一方で、平成25年度に厚生労働省から出された人生の最終段階における医療に関する意識調査によると、人生の最終段階における医療について家族と話し合ったことがあるという問いに約6割の方が全く話し合ったことが無いという回答結果が出ています。
また、自己決定のための意思表示の書面をあらかじめ作成しておくことへの賛成は約7割が賛成という回答していますが実際に作成したのはその中の3%という結果が出ています。
この数値から意思表示を行うきっかけや十分な自己判断・自己決定をするための情報が不足していることが示唆されます。
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医療・介護職が率先して取り組むべき
地域包括ケアシステムの「植木鉢モデル」の土台である“本人・家族の選択と心構え”は、ほとんどの全国の地域で構築されていないと言えるでしょう。
医療・介護従事者は、日々現場で自己決定や家族による選択が必要な場面に遭遇しています。
我々がその経験を基に、地域住民に対して、事前に死生観や延命治療について考える機会を設け、その重要性を口説いていくことも我々が地域に対して貢献できることの一つかもしれません。
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参考資料
・一般社団法人 日本臨床救急医学会:人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言
・厚生労働省 人生の最終段階における医療に関する意識調査
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