認知症によって変わること
今回紹介する研究は、認知症によって笑いのツボが変わりうるというものです。
研究規模を考えると、引き続きの調査が待たれますが、認知症の中核症状や周辺症状としてあまり取り上げられていない「ユーモアセンス」がどのように変わるかというヒントが得られるのではないでしょうか。
紹介する論文
Clark CN, et al. 2016. Altered sense of humor in dementia. Journal of Alzheimer’s disease 49: 111-119.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26444779
背景…
ユーモアセンスは、認知症者の社会的機能に関連する可能性があるものの、ユーモアセンスに着目した研究は限られたものしかなかった。
方法…
そこで、健常者 (21名) と同年齢の
・前頭側頭型認知症(behavioral variant frontotemporal dementia: 15名)
・意味性認知症(semantic dementia: 7名)
・進行性非流暢性失語(progressive nonfluent aphasia: 10名)
・アルツハイマー病(16名)
に罹患した方のユーモア行動や好みを評価するために、半構造化されたアンケートを実施した。
結果…
1)ユーモア反応が変化したのは、進行性非流暢性失語やアルツハイマー病よりも、「前頭側頭型認知症」と「意味性認知症」の方が有意に頻度が高かった。
2)皮肉的、または不条理な笑いを好んだ割合は、全患者群の方が健常群よりも大幅に少なかった。一方、ドタバタ喜劇に関しては、患者群と健常群と間に好みの差がなかった。
結論…
ユーモアのセンスの変化は、「前頭側頭型認知症」と「意味性認知症」で特に顕著なだけでなく、進行性非流暢性失語やアルツハイマー病でも頻繁であったことから、ユーモアは、認知症の社会認知障害に対する敏感な手がかりになるかもしれない。
この知見をどう活用するか?
認知症に罹患した方々の方が、言葉を巧みに使ったコメディーに対してあまり楽しいと感じない可能性が高いということです。
在宅の現場で、対象者の方が「どんな種類のコメディーを楽しんでいるか?」「以前と笑うポイントが内容が変わったのか?」など、笑いに注目して聞き取りをすることで、認知機能の変化を生活の様子からチェックできるかもしれません!
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