はじめまして、薬剤師の片桐です。
今回は自分も携わっている薬剤師の「在宅業務」について紹介します。
薬剤師ってどんなイメージを持っていますか?
「薬剤師って薬局にいるだけじゃないの?」
「患者さんの家に行って何するの?」
と思われるかもしれませんが、患者さんのお宅に訪問して行う仕事もあります。
薬物治療を行う上で考えられるニーズや困難と併せて、何をやっているのかを紹介します。
(Photo by Fotolia)
目次
3つのニーズから探る「在宅薬剤師」が求められている理由
ニーズ①:患者が薬局までいけない
足が不自由、移動手段がない、など何かしらの理由で薬局まで行くことができない患者さん。
こういう方の場合、認知機能はしっかりしていることが多いので、薬局での業務に「配達」が加わるだけのことが多いです。
ただお届けにあがるだけでなく、その際に、薬局の窓口で行っているような効果・副作用の評価も行います。
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ニーズ②:患者の服薬率が悪い
何らかの理由で、特に「認知機能」が落ちてきてお薬がしっかり飲むことができない患者さん。
必要な薬であるなら飲み忘れることはもちろん良くないですが、一番怖いのは薬を飲み過ぎてしまうことです。
ですので、あらかじめ服薬率が落ちてくる段階で飲み間違えないように、飲み忘れないように、1回に飲む分の薬を袋詰めする「一包化」やそれに「日付印字」を施したり、お薬カレンダーを提案します。
それでも改善が見込めない場合は「薬剤師が患者宅のお薬カレンダーなどの服薬支援グッズにセットをする」など、飲み間違えないような工夫をしに伺います。
その際に、何が原因で服薬忘れが多いかを確認すべく、改善のヒントになるような患者背景を探ります。
そうすることで、「デイサービスの日はしっかり飲めているようだから声掛けをデイサービスの方にお願いしよう」とか「昼は畑に出ているから用法の検討をしよう」といった発想が出てきます。
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ニーズ③:医師が訪問に割く時間が限られている
『在宅医』という言葉があるように、もちろん医師も往診や訪問診療で患者さんのご自宅を訪問しています。
ただ、多くの場合1人で開業しているクリニックの医師のため、お昼休みの時間に往診したり、合間の時間を縫って患者さんを診ているので頻繁には見に行くことは難しく、その間は患者さんの状態を確認することができません。
しかし、往診になっているレベルの患者さんには訪問看護や介護保険のサービスを利用されていることが多いので、医療者の目に良く触れることになります。そこで、多職種連携が大事になってきます。
ここで薬剤師は何ができるのかというと、患者さんのご自宅を訪問した際に【薬の効果や副作用の確認】ができる医療者は少ないのでこの点を薬剤師が担います。
要はフィジカルアセスメントです。
その際に確認するのが、【バイタルサイン】。
バイタルサインとは身体の状態を示す基本的なサインのことです。
例えば・・・
血圧を下げる薬が開始になったのであれば、血圧を測定し、薬が効いているのか。
また、下肢を確認して浮腫みが出ていないかといった副作用のチェックをします。
薬剤師が行うフィジカルアセスメントとして代表的なものは以下のようなものがあります。
<血圧・呼吸・脈拍・体温・意識・尿量>
これらを評価し、医師に報告することで医師が訪問する手間を省き、その空いた時間でより多くの患者さんを診ることができます。
これは半分理想ですが、在宅医療の流れはできていますし、薬剤師の中で在宅はひとつのムーブメントになっているので、今後この流れはさらに加速するものと思われます。
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「在宅薬剤」を行っている薬局は多い?
ここまでは薬剤師の患者さんのご自宅での仕事内容をご紹介しました。
ただ、実際に在宅業務を行っている薬局はどれくらいあるのでしょうか。
日本薬剤師会が発表した、平成23年度の「在宅医療等に関する実態調査」によると、平成23年10月度の訪問薬剤管理指導の実施実績(つまり、その月の訪問患者さんの数)は、
10人以下は47.3%(薬局数364軒中、210軒)
全く患者さんを訪問していない薬局は18.7%(薬局数364軒中、68軒)
という結果でした。
この調査は6年前のデータのため、現在はもっと多くの薬局が在宅医療に取り組んでいると思われますが、まだまだ他の医療・介護職の方々からの【薬剤師の在宅業務】への認識が薄いように感じられます。
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「在宅薬剤師」の主な流れ
診療報酬的側面
では実際に薬剤師が在宅訪問するようになるまでの流れを見てみましょう。
薬剤師が患者さん宅を訪問するにあたって、「訪問薬剤管理指導(介護認定を受けていない方)」もしくは「居宅療養管理指導(介護認定を受けている方)」という報酬を算定させて頂く(ことが多い)。
ただこれには「医師からの指示」が必要になるため、処方箋に訪問指示があって開始になるパターンが一番多いのではないかと思われます。
それ以外には、ケアマネジャーなどの他職種から相談があって開始になるケースや、薬剤師が薬局窓口でのやり取りが「なんか怪しいな・・・」と思って医師へ提案するパターンもあります。
在宅薬剤師で最も多い!?パターンとは
①:投薬時に「なんかちゃんと薬飲めて無さそうだなぁ」「家にたくさん薬残ってそうだなぁ」と感じる人を見つける。
↓
②:残薬がありそうな人には「ちょっと今度お邪魔させてもらっても良いですか?」などといい、お宅訪問させて頂く。
↓
③:残薬を回収し、次回の処方から差し引きする。
↓
④:薬剤師が訪問する状態になるまで飲めなくなっている方は大体何かしらの「飲めるような工夫」をしているので、配薬に関してはそれを生かしつつフォローする。
例えば、お薬カレンダーだったら、必要な分だけセットして残りは薬局で保管しておくなど。
↓
⑤:その後、処方医に状況の報告書を提出。また、ケアマネジャーや、地域の包括支援センターにも報告する。
最近はSNSを用いてその患者さんに関わる医療者でグループを作っているので、そこでも報告をする。場合によっては患者さん自身や、その家族がそのSNSグループに加わることがある。
↓
⑥:その後は医師の処方に合わせて定期的に訪問し、患者さんの薬物治療をフォローしていく。
こういった一連の流れが当薬局ではスタンダードです。
訪問回数としては基本的に月に1回、状態・他職種との兼ね合いなどによって週2回訪問することもあります。
状況確認のために算定外で訪問することもあります。
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薬剤師の可能性を拡げるためにできること
前半でも紹介しましたが、提供するサービスは患者さんとその家族のニーズによって変わります。
血圧などのバイタルサインまで取って欲しい方・取る必要がある方もいれば、本当に配達だけすればいいご家庭までさまざま。
ケア方法はその都度ニーズを確認しながら程良いところを探っていきます。
足りないのはもちろん、やりすぎも自尊心を削いでしまうので良くありません。
あくまで患者さん本人やご家族を薬物治療の面で「ささえる」というスタンスで薬剤師は関わっていきます。
それは薬局での投薬(外来)でも在宅でも変わりません。
今後は病床が削減され、在宅で医療・介護を受ける方が増えていく中で、我々薬剤師が「やらなければならないこと・できること」はまだまだあるように感じられます。
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