コメディのイワシタです。
今回は訪問看護(リハビリ)ステーションで活躍する、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、つまり地域で働くコメディカル職についてのお話です。
目次
病院医療と地域医療での異なる視点
まず病院医療と地域医療ではコメディカル職の視点や大切にしなければいけないことは異なります。
どちらが、正しいのか?
という話ではなく、各々の領域において「役割」が異なり、それによる「専門性」も異なってくる。ということです。
病院での医療と、地域医療でのミッション、役割に触れながら違いに関して検討してみます。
1、病院では問題解決型アプローチ 地域では問題支援型アプローチ
特に急性期の病院では
患者さまがどのような状態であっても即座の治療、ケアが必要です。
患者さんがたとえ、治療に関して拒否的な状況であっても
生命の危機、生命の安全性低下、今後の予後が不良にならないために、様々な治療を早急に行う必要があります。
ここには患者さまのニーズというより
医療者側の問題解決型アプローチが優先される、優先されるべきだと考えます。
反対に地域では生活期-維持期という状態にあることが多く
早急な治療-ケアというより
「その人がその人らしく生きていく支援」という視点が重要になります。
そのために、十分なコミュニケーションのもと、ラポールを築き、適切なニードを共有した上で治療、ケアを行う必要があります。
地域医療では問題を一方的に解決する、という視点ではなく、患者さまと治療者が問題や課題を共有し、ともに解決していく。という問題を「共有」し、治療者は「支援」するという立場が大事です。
つまり問題支援型のアプローチが重要なのです。
2、病院は医療者にとってはホーム 地域は医療者にとってはアウェイ
病院は患者さまにとってはアウェイ 地域は患者さまににとってはホーム
これは非常に大切な考え方です。
訪問看護や訪問リハビリテーションでは患者さまのご自宅に伺うことになります。
その際に病院で勤務していたような態度やマナーで介入してしまうと、大変迷惑であり、失礼であり、患者さまとのラポールはまず築けないと感じます。
よく病院から地域へ移行してこられた方がやってしまうダメマナーとして
※本当にあったはなし。
・靴を揃えない。
・靴下が汚い。素足。
・濡れた上着のまま気を使わず家に入る。
・治療やケアで使ったものを元の場所に戻さない。
・ご家族の存在をないがしろにする。
・勝手に洗面所を使う。
・強引に家の隅々を評価しようとする。(利用者様が入って欲しくないところにガツガツ入る)
・一方的に薬の管理方法を変える。
・家具の配置を強引に変える。
・家の内観を考えずに動作だけを評価して、強引に手すりの提案をする。
・家族の誰に対してもいきなりタメ口。
・・・・。
これらのことは
ずっと病院という「医療者にとってのホーム」で働いてきた方には本当に気をつけていただきたいところです。
また、地域では「患者さまのホーム」であることによって
ざっくばらんなコミュニケーションを図ることは容易で、患者さまの本音が聞き出しやすいのも特徴ですよね。
「リアルに生活場面で困っているところ」
は在宅であるからこそ、聴取できるところであり
ケア、アプローチすることにより効果的に患者さんのQOLの支援を行うことができるでしょう。
3、病院はいろいろ揃ってるが地域はあまり揃ってない
地域での医療を実施する際
病院のようにたくさんの治療機器はもちろん置いてありません。
訪問看護や訪問リハでは訪問時に「あるもの」を使って、様々な治療をクリエイティブに考えなければいけません。
4、病院での連携は「チーム医療」、地域での連携は「多(他)職種連携」
病院での連携は主に主治医、看護師、リハビリ、介護職、ソーシャルワーカー、薬剤師、放射線技師など、いわゆる医療-介護の専門職がチームになって患者さまの治療にあたりますが、地域では医療-介護の専門職の枠を出て、もっと広いインフォーマル連携も必要になります。
地域で連携する専門職の方々は、、、
主治医、看護師、リハビリ、介護職、ケアマネ、各介護サービス事業所の方、介護タクシーの方、大工さん、設計士さん、患者さまの務め先の人事の方、患者さまの近所の方、民生委員さん、弁護士さん、、、
そして、患者さんの生活に必要であれば
最寄りのパチンコ屋の店員(笑)、スーパーの店員、スポーツクラブの店員、愛人(笑)・・・本当に連携する人は様々です。
地域では、「その人らしい生活」を支援するために
様々なフォーマル・インフォーマルな職種、事業所と連携を図りながら、アプローチしていく必要があります。
5、病院では機能障害重視。地域では活動-参加重視。そして明瞭明確なゴール設定
1、でも記述しましたが
病院では問題解決や機能障害へのアプローチの重要度が高いですが、地域ではいかに地域社会で、QOLを高めながら生きて行くか?ー が最大のテーマになります。
そのために
機能障害だけにこだわらず(だけど決して蔑ろにはしない)
活動(activities)参加(participation)にウェイトを置いて支援していく必要があります。
さらに、地域では課題や問題を共有し医療者は患者さまをエンパワーメントしながら「支援していく」という姿勢が必要です。
そのためには
まず、在宅で関わる医療職が患者さまとじっくりコミュニケーションを図り、ゴールをより明確明瞭にする必要があります。
例えば、、、
○ADL自立 → 1日にトイレに6−7回はいっている。家族に迷惑をかけるのは嫌だ。まずは自分で用を足せるようになって、家族に負担をかけないようにしたい。あと、○ヶ月後くらいには近所の○○にも行きたいので、そこで困らないようにトイレの動作は自立を目指したい。
○肩の可動域向上 → 少し高い棚などの物がなかなかとれず、家事動作に支障が生じていて、それだけのために脚立をもってきたり、家族に依頼したりと面倒。なんとかして肩があがるようにしたい。
○摂食-嚥下機能向上 → 奥様と一緒に近くの喫茶点でランチができるように口から摂取したい。
患者さまが本当に目指したい
ゴールセッティングをサポートする技術
(※医療者が自分勝手に決めない!!)
が地域医療で活躍する医療者には必要です。
さいごに
いかがでしたか。
病院と地域では医療職の視点は大きく変わり、それぞれに重点を置かなければいけないところがあります。
各地での地域包括ケアシステムの構築において、今後ますます「地域医療専門職」「訪問医療職」の活躍の場が期待されます。
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