「認知症予防」と聞くと何を想像されますか?
認知症予防では、食習慣、運動習慣、生活習慣、知的行動習慣、対人接触など様々な要素の重要性が挙げられています。
地域での取り組みにおいても啓発活動を行ったり、実際に通いの場等で運動を行う、交流を持つ場をつくるなど様々な活動が見られています。
対人接触の要素においては、社会関係(社会的支援、社会的ネットワークおよび社会的活動)と認知症発症や認知機能低下との関連が報告されていますが、
ある特定の社会関係が認知症リスク軽減に良いのか、あるいは多様な社会関係を持つことが良いのかについての検討は十分になされていませんでした。
そこで今回は、8つの社会関係に着目し認知症発症リスクとの関連を検証した研究を紹介します。
(photo by Fotolia)
8つの社会関係に着目し「認知症発症リスク」検証した研究
対象と方法
日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトが2003年に要介護認定非該当の65歳以上男女を対象に実施した調査データから、13864名のその後の認知症と伴う要介護発生状況を追跡した。
社会関係として社会的視点(同居家族、別居子・親戚、友人・知人との支援のやりとり)、社会的ネットワーク(配偶者、別居子・親戚との交流、友人・近隣との交流の有無)、社会活動(地域の何らかのグループ活動参加有無、就労有無)の計8項目を測定した。
結果
年齢その他の変数や、他の社会関係変数の影響を調整しても、「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」の5つの社会関係がそれぞれ認知症発症リスクを11%~17%低下させる方向で関連していた。
これらの5つの変数を集計したスコア(0 ~5点)が0-1点の人と、2点以上の各得点の人とを比べた結果、5点の人では発症リスクが46%減少していた。
結論
社会関係変数のなかで、認知症発症リスクの軽減に関連する変数を特定した。
さらに、多様な種類の社会関係を持つ人は、あまり持たない人と比べて認知症発症リスクが約半分であることが検証された。
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社会との多様な関りは有効
以上の結果から、人とのつながりを単独で持つよりも、社会との多様な関わり方があることが認知症予防に一層有効な可能性があることがわかりました。
特に配偶者がいない人や、家族との支援のやりとりが期待できない高齢者では、友人・近隣との交流やグループ活動、就労の推進が認知症予防に重要な可能性があるといえます。
このため、社会関係について評価を行う場合にも、社会関係の有無のみではなく、誰とどの程度の関係性があるかといった多角的な視点を持って評価を行うことが必要であり、
社会関係の要素が少ない場合は適切な地域資源にマッチングさせていくことが重要になります。
また、就労の場も含めて不足している地域資源を充実させたり、新しい資源を創出する等で、社会参加の選択肢を増やし、
多様な社会関係を持てるような地域づくりを行うといったマクロな視点を持つことことも認知症予防を考えるにあたり大切になりますね。
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参考書籍
JAGESプロジェクト プレリリース資料
記事提供
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