地域包括ケアの失敗は47万人もの「死亡難民」を生む

2017.5.8 在宅医療, 在宅介護
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これまでの投稿では、地域包括ケアシステムに関連する事項について数々の投稿をしてきました。

今回は一度初心に帰り、地域包括ケアシステムの構築が「なぜ、今必要か」をまとめていきたいと思います。

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勘違いしてない?地域包括ケアのターゲット

まず、地域包括ケアシステムの供給と編成を考えるうえで、強調したいことは、地域包括ケアシステムの主たる対象は都市部であることです。

 

このことは今後の人口高齢化、特に後期高齢人口の急増が首都圏を中心とした都市部で著しいこと、それにもかかわらず他の地域と比べて、人口当たりの病床数や老人施設定員がはるかに不足していることを考えると、合理的と言えます。

 

また、厚生労働省は在宅ケアを大幅に拡充することを目指していますが、自宅での死亡割合の増加は想定、期待していません。

 

厚生労働省が目指すのは、地域包括ケアシステムにより「居宅生活の限界点を高める」ことです。

 

具体的には住み慣れた居宅で過ごす期間をできるだけ延ばし、その結果、終末期あるいはそれよりももう少し長い期間の病院、施設への入院・入所の率と期間をできるだけ抑制することです。

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地域包括ケアの目的を見つめなおす

二木(*1)によると地域包括ケアシステムの究極の目的は、

 

「今後の死亡急増時代に死亡難民が生じて社会問題化するのを予防することであり、自宅死亡割合の増加ではない」

 

とのことです。

 

また、元日本医科大学の長谷川敏彦教授の研究(*2)「ケアサイクル論」によると、急性期ケア~回復期ケア~長期ケアといった循環的なケアサイクルを、高齢男性は死亡するまでに3~5回、高齢女性は5~7回を繰り返すとされています。

 

今後の超高齢化社会ではこうした医療と介護が交互するケアサイクルの連鎖が日常となり、利用者一人一人のニーズに応じて切れ目なくサービスを提供する必要があります。

 

医療と介護の包括化、統合化の仕組みの構築が必要になります。

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姥捨て山の時代!?

そして今後、団塊の世代の大量死亡時代を迎えるため、2030年代には死亡者が年間165万人に達し、現状との差分の47万人の死に場所がないことになります。

 

医療機関、在宅で亡くなることができる人数を総数から引くと、47万人の死に場所が「その他」となり、死亡診断書の記載マニュアルによると「山、川、路上」となっています。

 

まさに、姥捨て山(うばすてやま)の状態です。

 

こういったことを回避し、団塊の世代の看取りを地域全体で支えるというのが、地域包括ケアシステムのもう一つの役割です。

 

いくつかの理由を挙げましたが、なぜ地域包括ケアシステムを構築する必要があるのかをある程度理解していただけたのではないかと思います。

 

そして、医療介護職種がなぜ連携する必要があるのかも感じていただけたのではないでしょうか。

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おわりに

医療介護専門職が地域で他職種や住民を巻き込み、適切なアクションを起こすことで、街が崩壊し、死亡難民が街に溢れるといった最悪な局面を避けることに繋がるのではないでしょうか。

参考資料

地域包括ケアと地域医療構想 二木 立

2025年へのカウントダウン 武藤正樹

記事提供

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