アプローチで忘れられがちな「IADL」
介護予防では、生活機能の低下した高齢者に対しては「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランス良く働きかけることが重要となります。
機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけでなく、生活環境の調整や、地域の中に生きがい・役割を持って生活できるような居場所と出番作り等、環境へのアプローチも考えていく必要があります。
特に要支援者はADLは自立していますが、IADLの一部が行いにくくなっている方が多く、この様な支障のある日常生活行為の多くは、生活の仕方や道具を工夫することで自立が期待できます。
今回はその点について書いていきます。
IADLに焦点を向けた関りをするには
軽度の要支援者への支援の基本として、IADLがうまくできない要因に焦点を当て、高齢者自身が「なぜうまくできないのか」「どうしたら、自分がしたいと思っている活動に再び参加できる様になるのか」に気付き、
「自分のことは自分で行える」ように、自ら問題解決に取り組める様に働きかけていくセルフマネジメントへの取り組みを促すことが重要と言われています。
このため、総合事業における保険医療専門職が短期集中的に支援する通所・訪問型サービスCにおいても、主体性を意識した上で「活動」「参加」も考慮した関わりを進めていく必要があります。
しかし、現状では通所型サービスにおいては運動・口腔機能や栄養状態の改善向けたプログラムが実施されており、個別目標もこれらの機能・状態の改善とする例が多く見られています。
IADLや生活行為にも働きかけるには、対象者がしたい、又はできるになりたい生活行為を、興味関心チェックシートや生活行為確認表を活用しながら具体的な目標として明確化した上で、
支障をきたしている生活行為の原因を、居宅や地域での生活環境を踏まえ、適切にアセスメントし、課題抽出するというプロセスをしっかりと踏むことが必要となります。
(Photo by Fotolia)
地域で働く療法士として何ができる?
これらのプロセスにおける療法士の役割としては、目標設定において、心身機能や能力、さらにライフスタイルや強みとなる環境因子等を包括的に捉え、機能的予後予測を立てながら実現可能のある具体的目標を設定できる様に助言することが求められています。
具体的な目標が設定された上で以下の様な関わりを行うことで、対象者の主体性を意識した上で、切れ目のない支援が行える一助となることが重要になります。
●心身機能や動作方法・環境因子への助言
●運動習慣の習慣化や生活習慣の見直しなどのセルフマネジメント力向上
●向上された機能維持が期待できる地域の受け皿へのソフトランディング
また、サービスC(*1)の仕様を決める際には、サービスの目的と内容、及び想定される対象者とのマッチングの十分な吟味が必要になります。
*1:サービスCとは
新しい予防事業の一環
【ミッション】
・生活機能の改善(一般高齢者へ)
【特徴】
・短期集中プログラム(3カ月)
【対象者】
・改善の意思が明確な人
・改善の見込みがある人
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サービスCの全国共通項
例えば、訪問型サービスC事業の導入目標が「閉じこもり高齢者を通所サービスに繋げる」であれば、訪問回数と期間は長めに設定する。
逆に「一つないし二つ程度のIADL・生活行為に問題がある方」を対象にするのであれば、訪問回数を少なめにする。
といった関係性を考慮して仕様が決まりますが、療法士は予後予測を行いながら、これらが適切にマッチングするように助言することも大切になります。
サービスCの仕様は各地で異なり多様となりますが、少なくとも
⑴支援目標の決定
⑵プログラム(支援内容)の立案
⑶プログラムの実施
⑷効果測定
の4つは共通しています。
これらの要素に療法士が全て関わることもあれば、一部のみに関わることもありますが、上記のことを意識しながら、住民を主体として、他職種と協働してサポートしていく立場を徹底しながら関わりを進めていく必要がありますね。
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参考資料
総合事業における効果的なIADL改善プログラム実践マニュアル、公立大学法人 首都東京大学、2017.3
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