昨今、看護師マンパワーの少なさによる看護師の疲弊→離職→更なる負担増
という悪循環となっている医療機関、事業所が少なくありません。
看護師が疲れている理由として真っ先に挙げられるのは、以下の3点です。
● 仕事内容・命や健康を預かる職責の重さ
● 人間関係
● 勤務体制(勤務時間等)
医療・介護・福祉の業界のナースの皆様は大変ですね!
高齢化が進む日本では、医療・介護・福祉の業界のニーズが高まる一方で、
病床数の関係から入退院の回転率が高まっているほか、
安全面や仕事の質の観点から看護師ひとりひとりがより高度な仕事(医療サービス)を求められるようになっていると聞きます。
そういった変化が、ナースのストレスを増大させているのでしょう。
目次
人材の流動性が加速
医療業界では人材の流動性が加速しています。
もともと、病院職員は国家資格などを保持した「職人集団」。今の病院でなければ自分の技術を活かせないことはないのです。従業員の判断で医療機関を選び、移ることが常識となっています。
そのため、医療業界ではどれだけ多くのスタッフを集めるかだけでなく、確保したスタッフをいかに引き止めることができるかという観点が必要となってきているのです。
どれだけ多くの看護師を確保できたとしても、看護師が定着しなくては意味がありません。
ここで大事になってくるのがES(従業員満足)向上という考え方です。
従業員の定着率を高め離職率を低く抑える工夫(=ES(従業員満足))が会社(医療機関)全体の疲弊を防ぎます。
ES(従業員満足)の紹介
ビジネスの世界で時々耳にするESという言葉。
インターネットでは次のように紹介されています。
ESとは
従業員満足(ES)とは、顧客満足(CS:customer satisfaction)に対比される概念で、従業員の業務内容や職場環境、人間関係などに対する満足度のことをいいます。 ESとは、「Employee Satisfaction」の略で「Employee(従業員)Satisfaction(満足)」。
従業員満足(ES)の向上とは、従業員が満足と感じるような、イキイキと働ける環境を会社の戦略として積極的に整備し支援していくことです。
それは何も給料や待遇面だけではありません。会社のビジョンや方針、上司のマネジメントや風土、文化、コミュニケーションなどその内容は多岐にわたります。
ESで大切なことは、会社全体でESを築き上げていくことです。
いくら経営者や組織のトップが呼びかけても現場が協力的でなければES向上は実現しません。
逆にいくら現場でひとりひとりが努力しても、経営者や組織のトップがESに理解がなければ実らない取り組みもあることでしょう。
医療機関がESを向上するためには具体的に何をする? 3つの提案
ESの取り組みとしては大きいものから小さいものまで様々です。
大まかには次のようなものになります。
- 環境整備
- 教育などによる導き
- プロセスと成果の確認
環境整備 ー まずは、マネジメント教育
職場環境の改善が従業員満足につながることは容易におわかり頂けるかと思います。
例えば、ナースの仕事上のリスクを減らして、安心・安全な職場づくりを行い、さらに報告・連絡・相談しやすい環境づくりをすると、ナースも働くことが楽しくなるのではないでしょうか。
そういう職場環境にもっとも必要となるのは、
看護管理者(マネージャー)の管理能力、マネジメント能力になります。
なので看護師を雇用している機関では、まずは管理者、マネージャーにそういった看護技術とは全く異なる研修、実習の必要性があるということです。
その管理者が職場の雰囲気や特性、そして個々のスタッフを育成する、サポートする、という視点のもと、現場スタッフ全体を働きやすくする必要があります。
また
現場スタッフだからこそ「もっとこうしたらいいのではないか」とアイデアが浮かぶ場合もあります。
現場スタッフが作った「職務満足向上委員会」が全社をあげての運動につながったという話もあり、一定の成果があがっているようです。
教育などによる導き ー課題をビジュアル化し、共有する能力を
「ナースが疲れない・疲れさせない仕事術、教えます!」(メディカ出版)では、現場スタッフが経営感覚を持つことの重要性について書かれてあります。
経営感覚を持つことが、どう従業員満足につながっていくということでしょうか。
例えば、経営感覚がないことによって、自分の働きがどのように組織にも貢献しているのかがわからず、
常に受け身で、仕事も言われたことしかしないケース。
ひどいときは言われたことすらできない。
そんなスタッフであればキャリアアップは難しいし、傍(はた)を楽(らく)にして、職場を改善し、皆にとって過ごしやすい職場づくりに貢献できないのではないでしょうか。
全スタッフが経営感覚を持つということは
現場をよくする際に必要不可欠なことであるわけです。
また現場の問題を拾い上げる際、そのひとつの手段が「見える化」です。
「安全で、倫理観があり、皆が連帯していて、現場での経験知がひろく皆に行き渡っていて、楽しい職場」を築くヒントは、日々の出来事の中に落ちています。しかし それは忙しさのあまり右から左に流しがちなものなのです。
それを文字や絵などに起こすことで(見える化、ビジュアル化することで)、自分ひとりで抱えていたり、自分の記憶に埋もれていきそうな問題を皆と共有することが可能になります。
管理者や先輩など皆の前で発表する場、仕組みがあればなおよしです。
ESは経営陣が取り組むイメージがあるかもしれませんが、 現場の看護師が勝ち取っていく部分もあるのかもしれません。 なぜなら、先述したような、安全で、倫理観があり、皆が連帯していて、現場での経験知がひろく皆に行き渡っていて、楽しい職場・・・ それは経営者の力だけでなく、現場の看護師が協力して作っていくものだからです。
日々の「ヒヤリ」・「ハット」などを見える化して皆と共有するような、経営感覚をもった、
主体的に動けるナースを増やす必要があるし、それこそが教育のはたらきではないでしょうか。
プロセスと成果の確認
「ディズニーに学ぶ満足循環力」(学研新書)ではESを4段階で考えています。
出典:「ディズニーに学ぶ満足循環力」志澤 秀一 (学研新書)
そしてこの第三階層・・・他者からの評価が、CS(顧客満足)にもつながっていく大切な階層だとしています。仕事(成果とプロセス)に対する正当な評価が、従業員のモチベーションにつながり、ひいては、お客様へと波及していくのです。
何より、ESを向上させていくという形成の土壌づくり、社風が大事
医療の現場が様変わりしていると聞きます。
それは、日本という社会の社会構造の変化からくるものであったり、制度の改正からくるものであったり、様々です。
ESが、流動性の加速しつつある医療業界で、人材を定着させるのに必要不可欠な視点であることはご理解頂けたでしょうか。
しかしそれは、経営者と現場のスタッフが協力して作り上げていくものなのです。
経営感覚をもって主体的に課題改善をしていけるできる看護師。
それ適正に評価し、育てる医療機関の土壌。
その医療機関ごとの特質を活かしたES向上が実現するといいですね。
参考文献:
「ナースが疲れない・疲れさせない仕事術、教えます!」
メディカ出版「ディズニーに学ぶ満足循環力」 志澤 秀一 学研新書
参考サイト:
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