岩下です。
このシリーズでは訪問看護の開業にまつわる様々な情報を発信していけたらと思います。
目次
訪問看護ステーションって需要あるの?
現在、日本では約7,400の訪問看護ステーションがあるとのデータがあります。
このグラフからもわかるように平成24年度の医療介護同時報酬改定以降、大きな右肩あがりでステーションが増えていることがわかります。
では、これだけ増えている中、まだ需要があるのか?
ということですが、率直に言うと
「現時点でも需要はある、そしてこれからもますます需要がましていく」
というのが私としても感じでいるところです。
地域包括ケアシステムの構築というのが、2025年に向けての市町村レベルでの大きなミッションです。
地域包括ケアシステムとは、
「要介護‐要医療状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的提供される地域のシステム」のことです。
そして、もっと簡単に解釈すると
「寝たきりにならず、元気なまま、幸せに死ぬことができる地域づくり」です。
そしてこの中で、訪問看護ステーション、訪問リハビリテーションというのは大変重要な役割があるのは、この地域包括ケアの定義からしても容易に想像できることですね。
- 住み慣れた家で重度な要介護‐医療状態であっても暮らす。
⇒ 訪問看護、リハビリが必要。
- 寝たきりにならず、元気な状態で健康寿命を伸ばす。介護予防。
⇒ リハビリ必要。
- 住み慣れた家で、最後を過ごす。
⇒ 訪問看護(看取り)が必要。
ですよね。
「訪問看護ステーション」は安易に開設するものではない。と思う。
では「訪問看護ステーション」はとにかくどんどん開設すれば、需要もあり、事業も安定するのか?
ということですが、答えは「No」です。
この記事を読まれた方で、訪問看護ステーションを開設したい!と思われている方には本当にじっくり以下の記事を読んで頂きたいです。
なぜ容易に開設してはいけないのか?
実は先ほどのグラフのように毎年毎年ステーションの数は増えていますが、平成26年度の全国訪問看護事業協会のデータによると新規開設件数は全国で896件ですが、なんと廃止、休止件数も400件という驚くべき数字となっています。
もちろん純増では増えているということですが、毎年、その新規件数の半分にあたる数も、経営難又は、休止になっているということです。
なぜ社会ニーズ、需要がこれだけたくさんあるのに、中止や廃止になるステーションが後を絶たないのでしょうか。
原因はいくつかありますが、多い原因を述べたいと思います。
訪問看護ステーションが中止、廃止になる大きな理由。2つ
まずは、
事業者に経営視点がなく、小規模ステーションのまま経過し、結果的に赤字を垂れ流し続けるだけ。経営難になり廃止
でしょう。
また、その事業母体は以下のようなところが多いです。
・経営のノウハウが全くなく、「思い」だけでスタートしてしまった、看護師やその他コメディカル職が代表となってやっている
・その逆で全く「思い」がなく、「儲けるぞ」という拝金主義のスイッチだけでスタートしてしまった、他業界からの参入
が経営難なところが多い印象です。
その前者の「思い」だけ、ということについて。
「思い」だけで創業したが、お金が回らなくなり廃止に…。
訪問看護、地域医療に対する理念、道徳、思いは最も尊重されるものであり、本当に重要です。
まずそれが第一なのはいうまでもありません。
しかし
その素晴らしい、理念、思いを達成し続けるために、必ず経済、経営の視点が必要なのです。
自分も周りの社員も、給料は全然少なくてもいいから
ずーっと全員ボランティアでやり続ける!!
というステーションのチームがあれば、それはそれで良いのかもしれませんが、そのような「思い」だけで、本当に持続するでしょうか。
ボランティアと言われるもので、私はずーっと継続しているのをあまり聞いたことがありません。
これから開設しようとしている方がいれば、私は必ずこう言っています。
「お願いです。経済、経営の視点を持てないならステーションの開設は絶対辞めてください。なぜなら、私達が最も大切にしなければいけない利用者さま、患者さまを不幸にしてします可能性があるからです。」
独りよがりの「思い」では 単なる「わがまま」です。
誰のために、何のために、何故ステーションを開設するのか。
それを真摯に考えると、道徳と経済を両輪にしなければいけないということに気づくと思います。
「経済」は利用者様の支援(道徳)の継続のために必要な概念である。
ということをこれからチャレンジされる方には是非持っておいてほしいマインドです。
看護師が突然退職し、常勤換算 2,5人 を満たせない形となり、中止に
訪問看護ステーションでは常勤換算2,5人以上というが、必須条件となっています。
これも大変残念なことですが
小規模ステーションで看護師の常勤換算2,5人ギリギリで運営しているところで
突然何かしらの原因で看護師が退職。
次の候補も見つからず、遺憾ながら休止、廃止に。 - というパターンがあります。
看護師は女性が多く、どうしてもワークライフバランスを保って行かなければいけないことが多いものです。
出産、子育て、旦那の転勤、親の介護、、、など様々なライフイベントがある中、どうしても看護師の離職率は高くなりがちです。
そして、そもそも訪問看護師の母数が、ステーションの数に比してまだまだものすごく少ないのです。
訪問看護師数は看護師全体の約2~3%程度と言われています。
ただでさえ、看護師不足が社会問題となっている中
さらに訪問看護師は100人に2,3人しかいないということです。
地域差ももちろんあると思いますが、誰かが退職したからといって、募集をしてもすぐに採用できない。
という状況にあるステーションがほとんどでしょう。
そのために、個々のステーションは大規模化を目指し、マンパワーを計画的に拡充していくことが必須でしょう。
それにより、例えやむをえない理由で退職しても、チームでフォローすることができますし、そもそも、スタッフ数が増えることで1人1人の責任も良い意味で分散され、休みも取りやすくなり、安心して働く環境を築きやすいというのが、訪問看護ステーションの特徴です。
さいごに
いかがでしたか。
地域包括ケアシステムを構築していくなか、訪問看護、訪問リハビリが重要なのは言うまでもありません。しかし、開設を考えている方は
「流行っているから」
「儲かりそうだから」
「地域医療をやりたいから」
「こんな治療をしたいから」
という安易な考えや、浅い思いだけでなく、きちんとした理念、ビジョン、そして経済観念、事業計画をもってください。
特に医療者が開設されるときは本当に経済観念がない人が多く、それが、様々な人に迷惑をかけてしまうことになりかねません。
道徳と経済の両輪を目指せる方は、是非チャレンジしてください。
ともに、日本の地域包括ケアの一助を担っていきましょう。
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